2014年1月15日

「向き変え」と「ため」2


「向き変え」と「ため」その2回目です。
今回は、「向き変え」の効果やラインについて、またまた以前のブログから引用してお話しします。
「向き変え」は、ウェブページ、『All About』「コーナリング上達の秘訣は”向き変え”」によれば、
コーナーの入り口でバイクの向きを変えて、旋回に入ること」と定義されています。
そして、コーナリングの最初で向きを変えてしまうことのメリットの説明として、下図を示して解説しています。

どちらの走行ラインも旋回の半径は同じ。
しかし、実線の走行ラインはセンターラインを大きくはみ出しています。
一方で、点線のラインは余裕を持って曲がりきれています。
成り行きで曲がってしまうか、一瞬で向きを変えてしまうかの違いは、大きいのです
  * 図、キャプションとも「コーナリング上達の秘訣は”向き変え”」より。




コーナー進入前のバイクが直立した状態から、カクッっと向きを変える瞬間に車体が傾いた状態になります。
そして旋回動作が始まったときには、すでにその旋回に合わせたバンク角に落ち着くのです。
あとは安定した旋回でコーナーの出口を目指しましょう
  * 図、キャプションとも「コーナリング上達の秘訣は”向き変え”」より。

この上の図のバキッと直進部から折れ曲がったライン。現実には物理的に無理なラインに見えます。
そのとおり、無理です。現実のバイクは決してこんなふうに走ったりはしません。
しかし、実際に向き変えをマスターしている人の後ろを走って向き変えを見ると、まるでこんなふうに走っているように見えるでしょうし、自分で「向き変え」をしてみてできたときには、まさにこのようなバキッとラインが変わったように感じられるでしょう。
つまり、現実には不可能であっても、感覚的にはまさに上の図のように感じられるのです。
(…と、私は考えている、ということです。このサイトは私の個人的なサイトですから、正しいという保証はありません、正しいかどうかは、お読みの方が判断なさってください。)
そして、向き変えをマスターすると、コーナリングでの自由度が増し、カーブでアウト側に飛び出しそうになることが飛躍的に減少します。

でも、物理的にありえない。

どうして物理的にありえないことが、後方から見ていたり、自分で走っていたりすると、まさに上の図のように感じられるのでしょうか。
私は、そこに「錯覚」が作用しているのではないか…と考えています。

以下、またまた長い引用で申しわけありませんが、私の以前のブログより、『峠を楽しく8 ポイントDその1「錯覚」』からの向き変えに関する、イメージと見た目の錯覚の部分です。

(ここから引用です。)


さて、冒頭のクイズ。目の前の直線の後、下りながら90°かそれ以上左に曲がっていくコーナー。どんなラインで走るでしょうか。下の赤のライン、青のライン、どちらがいいですか。


赤ライン


青ライン
 赤ラインは、(絵がひどくて線が震えてますが^^;)滑らかにアウトからインへと寄って行き、コーナーでイン、おそらく立ち上がりでも同じように滑らかにアウトに寄りながら立ち上がっていく、「アウト・イン・アウト」のライン。 
青ラインは斜線の中央をずっと直線的に進んでいって、コーナーの奥で「かくっ」とラインを折り曲げて抜けているように見えますね。物理的な法則からいっても、ちょっと無理があるんじゃないでしょうか。
ところが、正解は「青ライン」。 赤ラインは危険で、本人は安全にマージンもちゃんととり、スピードも出し過ぎないで走っているつもりでも、時々対向車線にはみ出してしまったりするのです。
ただ、この地点から赤・青それぞれのラインで走っていくライダーを後ろから見ると、赤ラインのライダーは徐々に向きを換えながら滑らかに旋回していくように見えるのに対して、青ラインのライダーは、まっすぐ突っ込んでいって、ぱっ、くるっと向きを変えたかと思うと、シュッと左に消えていったように見えます。
青の方が「かっこいい」かもしれないが、ちょっと乱暴じゃないか?なぜ、赤がダメなのか………?
それは、「錯覚」のせい。 我々の「見ている」感覚と、実際の走りとは、大きく違うのです。そして我々は見ている感覚をベースに、走りを組み立てていきます。

上の写真のコーナーを真上から見た図を模式的に描いてみました。すごい急カーブに見えますが、現実にはこんなもの。これでもやはり急カーブ。ヘヤピンカーブも歩いてみると、実は結構「長い」とこに気づく場合も多いと思います。
滑らかにコーナリングに入っていったかに見えた赤ライン。 実は、実際のコーナーよりもはるかに大きな半径で旋回を始めてしまっていたのでした。 本人にはその自覚はないと思いますが、現実は現実。コーナーの途中でそのままでは曲がりきれないことに気づき、しかも下りなので、ブレーキをかけながら何とか旋回していきますが、何度も言っているように、「バイクは一度安定した旋回状態に入ってしまうと、そこから大きく旋回状態を変えることは難しい」のです。 結局減速を続けながら旋回をするしかなく、そうなると視線も近くなって、コーナーの出口が見えている位置なのに、見切れなくなります。ゆっくり走っているのにどきどきして怖い、そんなコーナリングになってしまいます。しかも、本人にはこのコーナー「奥で曲がりがきつくなっていた」ように感じるのです。これは嘘をついているのではありません。本当にそう感じるのです。
青ラインはブレーキングしながらDポイントまでまっすぐ進んでいきます。 写真ではコーナーが過ぎてからバキッと直角に曲がったようなラインに見えましたが、それほど奥でもありません。ただ、これ以上直進すると、センターラインを越してしまう、またはセンターラインをカットしてくる対向車にぶつかりそうで、危険、という、ぎりぎり近くまでまっすぐ入っていきます。
そしてD地点でバンクを開始、と同時に旋回を開始します。 十分にスピードを落としておき、道の曲がる半径よりも小さな半径でアウト‐インに入るように旋回を開始するのです。
このD地点がコーナーすべての中で一番遅いポイント。 赤ラインの同じくらいの位置の速度よりも遅いくらいです。
このD地点での「向き変え」が成功すれば、青ラインを見れば分かるように、すぐにコーナーの出口が見えてきます。もう加速しながらの旋回に入ってもアウトに飛び出す心配がないので、アクセルを開けられます。アクセルを開け、リヤに駆動力がかかると、バイクはバンクしていても安定し、安心感とともに旋回加速をしていくことになります。コーナーの先が見えているのですから、怖さもありません。
脱出時、安心して安全マージンを大きくとった青ラインの方が、赤ラインを走ったライダーよりもはるかに速度が乗っています。つまり、安全で、速いのです。


この向き変え、本人も、後ろで見ている人も、ポイントDで直進からコーナリングに切り替えたとたん、バキッと進路が変わり、バイクの向きが変わったように見え、感じます。しかし、現実にはそんなことはありえません。 真上から見れば、図の左のラインが実際に起こっていること。 直線から旋回へ、ほぼ一瞬で切り替えていて、この図でもまだ誇張しているのですが、実際のラインはこんなもの。
でも、本人の感覚や、後ろから見ている人には、右側のように見え、感じます。
この錯覚の起きる原因は2つ。ひとつは、コーナーを見る位置です。 真上から自分が進むコーナーを見ることは現実ではありません。 低いところから見ると、横方向はそのまま見えますが、奥行き方向、前後方向は圧縮されて見えます。 横断歩道が近いという路面にペイントされたひし形のマーク。⇒「◇」 車やバイクから見ればひし形に見えますが、歩道を歩いていて道路横から見ると、すごく細長く見えます。 車線の変更を促す白の縞々ゼブラゾーン。車では車線変更の角度がかなり急に見えるのに、歩いていると、こんなにゆるい角度でこんなに長さを使って車線変更するの?と思うくらいです。 前後・遠近方向の圧縮効果、これが一つ目の原因です。
もう1つは、バイクが高速で進行しているということ。 高速といってもカーブによっては時速30キロくらいだったりもしますが、それでも普通の人が全力疾走した速さよりも速い。 速度が早くなるほど、遠近の圧縮効果は増大。ますます、前後が縮み、バキッと進路変更したように感じます。
それからもう一回左の実際ラインを見ていただきたいのですが、もし、このラインに沿って例えば時速30キロの等速で加速も減速もせずにバイクが走ったら、後ろから見たらどう見えるか、想像してみてください。 
そう、まっすぐ遠ざかるバイクは、しばらくはただしずしずと遠ざかるように見えますが、D地点から左に動き始めてたと思うと、向きを換えながら、加速的に左への移動して消えていきます。
これは直進しているときは左への移動速度はゼロですが、完全に左を向いた時は左への移動速度が30キロになっているから。 図をよく見て、点の移動が図の下からどう見えるか、想像してみてください。
そして、これが、上手な人が、コーナーに入ったかと思うと、ひゅッとコーナーの奥に吸い込まれるように消えていく、そう見える理由です。
一見滑らかに見えた赤ライン。最後まで滑らかに見えたのは、コーナー後半でも向きが変わらず、左方向への加速が弱かったからでした。つまり、道が曲がっているのに曲がりきれていないのですから、アウトに飛び出しそうになっているのです。
「向き変え」を考えるとき、この我々誰もがそう感じる錯覚を認識しておかないと、ありえないことを論じているように感じたり、できもしないことをしようとしてやたら力んだりしてしまいます。 実際には左の図。でも実感としては右の図のイメージ。それが「向き変え」のラインです。
    *以上、『峠を楽しく8 ポイントDその1「錯覚」』からの引用でした。




上の写真。
この写真も、遠近に錯覚が隠されています。
それは道の左側に歩道があって、その先に電柱が2本ありますよね。
その電柱から、道は勾配が変わって坂が急になっているのです。
道の右側をみると、そんなに急に傾斜が変わっているようには見えないのに。
その意味でも、この赤色ラインは、スムーズにインに寄っていっているように見えて、
実はかなり手前過ぎるアプローチになっています。

安全を何より大事にする公道でのライディングでは、無駄に思えても、遠回りに思えても、マージンを大きく残すライン、速度、加減速のタイミング、それらを合わせた「プラン」をいつでも考えてコーナーにアプローチする必要があります。

次回は、「ため」について、もう少し述べます。


2 件のコメント:

  1. kaori2014年1月18日 10:15

    樹生さんおはようございます。
    雪の多い寒い一月です。
    しかし、少しずつ陽が長くなるのも
    実感できてうれしいです。

    樹生さんのライテク講座は、いつまでたっても直感乗りの
    ワタシには難しいのですが、いつも読んでいて、あ、ここは
    当てはまったなどと思うとほっとしたりしてます。
    今回の青ラインもそうでした。

    重くて重心の高いカワサキ4気筒に長くのっていたせいもあり、
    恐怖と臆病さがついてまわり、いつも基本左端3割のところにいました。
    直線でまずは減速完了して、
    向き変えは左廻りはバイク車線幅で1台分余裕
    右廻りは2台分余裕くらいのところ それを狙うでもないですが
    結果的にそこを走っていした。これはもう変わらないです。

    もう、速くなくてもいいんですが、楽に楽しく走れたら
    いいですし、今の車両は非力ですが小さくて重心も低く、
    クランクケース中心でゴロンと廻れそうなので、
    新しい乗り味を楽しめるかもしれません。
    コーナリングの重力の法則は不変なので、
    今年はもうすこし考えて走るようになれたらいいな~と
    思っています。




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    1. kaoriさん、こんにちは。
      午後5時でも真っ暗にならなく、朝6時半にはかなり明るい…。
      今週は寒い日が続きましたが、陽の長さは確実に遠くからの春の接近を告げているようです。

      私も基本的には直線区間で減速終了、倒してからはアクセルを開けられるようにして走るパターンです。
      何かあった時に一番強い(事故に遭いにくい)パターンで、かつ、気持ちよく走れるパターンだと思います。
      V7はGPZに比べると軽く、タイヤが細く、感じがかなり違うので、コーナリングも大分変ってくると思います。
      何より気持ちよく、ゆったりとしたツーリングに出たい今年です。

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