2014年7月16日

空と雲と風と。(5)

滑りやすく、埋まりやすく、ハンドルをとたれやすいジャリ敷きの林道と格闘しながらゆきかぜを走らせる。
やっと道は森を抜け、尾根筋に出た。
一気に展望が開け、青い空と白い雲の光景が広がった。
道は加須美峠に達し、分岐から函岳レーダー道路へ入った。


2014/7/8 12:13
相変わらず路面のグリップは信用できないが、景色が開けただけで、こうも気持ちが変わるものか。

2014/7/8  12:14
標高も1000m前後に達し、北の大地の山は森林限界を迎えようとしている。
周囲の樹が灌木になってきている。

風が少し、吹いている。
空の雲が流れる。

バイクを停め、ヘルメットを脱いで顔や頭、首の汗をぬぐう。
陽射しは強いが、風は涼しい。

2014/7/8 12:21
前方に函岳山頂のレーダードームが見えてきた。
あそこがゴール。
ここからもさらに上がる。
雪渓が少し残っている。

2014/7/8  12:24
上の写真の左カーブを曲がると、長い直線が見えた。道路を横切る側溝のところだけ舗装され、グレーチングの蓋がされている。ゆきかぜを停める。
ここから先はジャリが深い。まだ撒いて間もないようだ。
転倒しないように、再度言い聞かせる。
「ゆっくり、慎重に、車体は垂直に。」
空は高いが、緊張の方が勝っていた。

深ジャリはオンロードバイクが最も苦手とする路面のひとつだ。(もうひとつはぬかるみだ。)

2014/7/8 12:33
深ジャリの道を下り、また登り、路面と格闘しながら登ってくると、道端に雪の残っているところに来た。

ちょっとしか進んでいないのに、腕も、足も、かなり疲れている。
下りてヘルメットをとり、上着も脱いで体操をし、ほんの少しの間、風に吹かれる。

2014/7/8 12:34
空と雲と風が、僕たちを包む。
今日、こういう形でこの場所に来たことを、少しだけ後悔している。
もう少し朝早く出て、もっときちんとした気持ちで、もっと林道用にゆきかぜにもプロテクターを装備して、来るべきだった。
この山や、この道や、この空、この雲、この風に対して、僕は、
少し、失礼だった。

さあ、ゴールは近い。

も少し、ゆきかぜ、頑張ってくれ。

2014/7/8 12:44
山頂は予想以上に広いフラットなジャリの駐車場があり、そこから少し登ったところに灯台のようにレーダー基地があった。
深ジャリの、なるべく浅いところを探し、ゆきかぜを停めた。

2014/7/8 12:44
オフロードバイクの先客が一人、来ていた。
テントを張って道内を回っているツーリストだ。
今日はキャンプ地から空身で上がってきたそうだ。
お互いに少しだけ、話をする。
それでも全く深入りしないのは、大人のたしなみなのか。現代人の稀薄性なのか。
でも、この人も、一人きりでバイクと共有する時間も、とても大切に思っていることが感じられた。
その上で、旅先での出会いに過剰な期待もせず、しかし、「袖擦り合うも他生の縁」、互いの無事と旅の豊かならんことを、互いに寿ぎ、そして別れた。

僕は歩いて、山頂からの景色を眺めることにする。
そのライダーは、ちょうど、下山するところだった。そのまま、下山していく。

雲が自分の影を山肌にはっきりと落としながら、風に吹かれて、ゆっくりと移動していった。
光の筋が微かに見えた。
遠くからはゆっくり移動して見える雲。真下では、雲の速さは、とても追いつけないほどに速い。
昼を過ぎ、雲の量が見る見る増してきている。
山の天候は変わりやすい。
僕も早めに下山することにしよう。  (つづく)

2 件のコメント:

  1. すんげーワクワクする(≧∇≦)自分のバイクじゃ無理かな~(>_<) 行ってみたいです(^^)

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    1. 竹さん、こんにちは。
      路面はフラットなので、普通はオンロードバイクでも行けると言えるところなんですが、撒いてあるジャリがとても滑りやすく、場所によって深いので、とても神経が疲れました。
      ダート慣れしている人なら行けると思いますが、お勧めできません。オフバイクの人も転んでいましたし。
      装備をしっかりして転倒もあることを想定に入れているオフバイクの方には、楽しい道だと思います。もちろんそういう方はこんな道でもあまり転ばないと思いますし、転倒するつもりでは走らないものですけれど、「転倒もある」ことはダートに足を踏み入れるときには必ず想定していなければならないことだと思います。
      今回、僕のグッチは速度を上げての転倒では場合によって自走できなくなる可能性もあったので、相当に低速で走っています。「ブレーキを掛けるとたぶん転倒する」という場所もあるので、エンジンブレーキとジャリの走行抵抗だけで減速することを見越してペースを決めなければならず、道と路面の読みも要求されます。一見フラットで走りやすい部類のダートに見えるので、なおさらなんですね。
      自分のバイクでのダート走行の経験値がある程度以上ある人でないと無理だと思います。
      とても神経と筋肉の疲れた林道行でした。
      楽しかったけれど、オンロードバイクの方にはおすすめできません。

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