2014年7月9日

空と雲と風と。(2)

道道11号線と別れてから北上する道道28号線は、アスファルト普通舗装の往復2車線。
谷に沿って当別川を遡っていくワインディングロードだ。
時々数百メートルの直線が現れ、それを曲がりの浅い中速コーナーががつないでいるレイアウトで、ほとんどのコーナーはブラインド。ヘヤピンのような急カーブはほとんどなく、いわゆるつづら折りの道というわけでもない。

Rにすると50~60くらいが多くて、たまに100Rくらいの長いカーブもある。
谷は次第に狭くなるが、V字谷という感じではなく、北海道の小さな河川の中流域から上流域によくある感じの山間の道だ。
走りやすく、交通量は少ないが絶景を楽しむ道ではない。

ゆきかぜを走らせた。

ほとんどがブラインドコーナーだから、フルバンクで攻めるわけには行かない。
バンク角は浅めにとどめ、直線区間で十分に減速し、カーブの前半で向きを変えてしまって、出口が見えたらしっかり開ける。
そういう乗り方に徹しながら、ゆきかぜの「くせ」を探る。

2014/7/8:03

各ギヤ、エンジン回転のリミッターは7,000rpmで作動する。
最高出力50psは6200rpmで、最大トルク、60Nmは、2,800rpmで発揮。
最大トルクがかなりの低回転で発揮され、最高出力との回転数差が大きい。
これはトルクバンドが非常に広いことを意味し、回さなくても、日常的に十分加速力、登坂力が確保されていることを意味している。
実際に街乗りではそうだ。3500rpmまでで日常使用には充分に足りる。

また、MOTO GUZZI のエンジンが回せば回すほど振動が少なくなる…というのは有名な話だ。
コンロッドのビッグエンドを共有する90°V、型エンジンは理論一次振動がゼロになるためだ。

が、僕のゆきかぜ号はリミッターまで廻しても振動ゼロにはならない。
細かい振動が、ステップ、ハンドルに残る。

さて、ワインディングでも低速、中速のコーナーを平和に通過するアベレージでは、回転数も3500rpmまでで足りる。
2500rpmくらいからぱっと開けても、しっかりと後輪が路面を蹴ってくれるからだ。
バンク角も20度くらいで済む。

シャフトドライブのゆきかぜ、フロントフォークは減衰力やスプリングプリロードを動かせないので、リヤのみの調整となる。
現在のリヤのプリロードは、リヤショックのねじ切り部分で23mmにしてある。

(写真は6月29日に洗車したときのもの。
ばねの下部、ナットの下にねじの溝が切られている部分があるが、その溝が縦に23mm見えるような位置までプリロードをかけているという意味である。

昨年秋のテストでは最も自分との相性がよく感じたので、今シーズンもそのままにしてある。

車体の傾きと舵角の関係が一番自然に思えた車体姿勢だった。




少しペースを上げる。

速度を上げると、バンピーな路面は難易度が上がる。
凸凹を通過すると荷重が抜けたり、かかったりして旋回を一定に保てないし、ブレーキングでも安定して強く掛けることは難しくなるからだ。

もちろん、通常のツーリングペースなら何ら問題はない。

道道28号線の北側の方は、場所によるが、かなりうねっていて、深いバンク角で旋回すると、バンプを越えた時に荷重が抜けて旋回できなくなったり、場合によっては外側に数10センチ飛ばされたりする。もっと厄介なのは、V7の場合、バンクしていって最初に接地するのが、左側はサイドスタンドの足を掛ける部分なので、そこを強く当てるとタイヤの面圧が下がり、さらに危険な状況になってしまう点だ。

やはりバンク角は浅めにとどめるようにする。

バンプを越えるとかなり揺れる。これはどんなバイクでもそうなのだが、思い知らされるのはGPZ1100の足回りの秀逸だったことだ。
フロントはハイパープロのスプリングにIPONEのフォークオイル。リヤはボトムリンクのモノショックでWP製のものにリプレイスしていた。
V7は、車重は70kg以上GPZよりも軽いのだが、リヤも2本ショック、フロントは40φの正立式テレスピコップ式フォークだが、いかんせんコストが削られている感じがして、少しバタバタする。
しかし、さすがなのは、かなりのバンプでもガツン!という底付きの衝撃は一度も来なかったことだ。
まあ、ジャンプしたわけでもないし昨今のサスとしては当たり前なのかもしれないが、こんなところで底付きされては安心して走れないので、それはとてもありがたい感じがした。


2014/7/8  8:00 
さて、V7の旋回特性だが、コーナリングの場面ごとにまとめてみよう。

1 減速区間。

フロントブレーキは320mm径シングルディスクにブレンボ製のマスター、キャリパー。
リヤは260mm系ディスク。やはりブレンボ製のマスター、キャリパー。
前後とも扱いやすく、わかりやすい。効き始めてからのコントロール幅が大きいので、ブレーキングの強弱の調整がとてもしやすい。
その代わり、フロントの絶対的制動力は大きくない。…と言っても、これも普段使いで不足を感じることはまずない。むしろ、効き過ぎて神経がピリピリするよりもずっと有効だ。
ただ、攻めた走りの時には制動にそれなりの握力を要求してくる。僕程度の走りでは熱ダレは感じなかった。
ブレーキング時の車体姿勢も安定していて、強くブレーキを掛けやすい。最終的にノーズダイブするのだが、僕にはフロントの動きが速すぎず、遅すぎず、ちょうどわかりやすい感じに思えた。
また、フルブレーキ中にフロントがロックして急に左右どちらかに切れ込んで転倒するのではないか…、という恐怖は、ほとんど感じなかった。18インチのタイヤ系、やや後方低い位置にある重心なども効いているのかもしれない。
また、ブレーキの利き方が安定しているというか、信頼できる感じなのもとてもいい。いつもと利き方が違う!とパニックになることがないのだ。

並の制動力でいいなら、ブレーキングはとてもしやすく、安心して、楽しんでコーナーにアプローチできる。

2 向き変え(カットイン)

減速から旋回に切り替えるパート。直立から車体をバンクさせるパートだ。
V7の場合は、直線部分で減速は終えておくのが前提だ。ほぼフロント一輪車状態でぎゅわわわ…とブレーキングしながら無理やりフロントからねじ伏せて倒しこみ、コーナー内側へ舵を切り、ラインに乗せていく…なんてことは、しないほうがいい。

縦置きクランク、とシャフトドライブの組み合わせはいわゆる「向き変え」(コーナー入口でバンクすると同時に大きく向きを変えて一気に旋回状態に入れる)は向いていないようなイメージもあるかもしれないが、大丈夫、V7でもブレーキリリースをスイッチにした向き変えは分かりやすく、しかもかなり決まる。
これには確かにコツもある。
ちょっと前の記事にも書いたが、力ずくでバイクを倒しても、直進状態のままバイクが先に倒れ、それからタイヤに負担をかけて旋回が始まるので、タイムラグが生じてしまってうまくいかない。
イメージとしては(あくまで、イメージです。)やや後方に着座、後輪の接地点を軸にして旋回し車体の前の方は負荷がないまま後から追随してくるような、そんな感じでバンクする。

リヤステアだ。

V7は、がばっと前に座って前荷重で乗るよりも、後ろ寄りに座って、リヤから旋回していく方が明らかによく曲がるバイクだ。

その向き変えは、恐ろしいほどの切れ味はないが、いつも安心して旋回力を引き出せる、安定型のものだ。
フロントにくせがなく、切れ込んだり、ステアが遅れてバンクだけ先行する感じになったりせず、きれいに倒れると同時に緩やかに旋回状態に入っていく。
その過渡特性が一定なので、これも信頼感を生み、コーナリングアプローチに自身が持てるのだ。

向き変えしないと曲がらないのか?
もちろんそんなことはない。
バンク角と旋回力の関係は運転している感覚としてはだいたい比例関係にあり、あるポイントまで曲がらなくてある角度から急に切れ込んだりしないので、これも安心して、普通にバイクと一緒に自分も倒れ込んでいけば、釣り合ったところできれいに旋回するし、0度から徐々にバンクを深めていく途中も、徐々に旋回力が増していくのが分かるので、とても走りやすい。

いかようにも乗れる、フレンドリーなハンドリングだ。

ただ、向き変えした方が確かにシャープに曲がれることは事実だ。フロントにかぶればかぶさるほどに、曲がらないアンダー傾向は強まる。これもわかりやすい。

手ごたえが常にわかりやすく、曲がる時の気持ちよさがうまく走れた時ほど大きいので、自然に無理なく曲がる乗り方が乗り手に身について来るのではないだろうか。
よき教科書のようなバイクだと思う。

ただし、これはタウンスピードやツーリングペース、またはそれにもう少し上乗せしたときまでの話しだ。


3 旋回。

一度バンク角が安定し、旋回状態に入ると、非常に安定する。
バイアスのタイヤは接地点が常に少し動いている感じで、べたっという接地感ではない。
だが、グリップ力の不足は感じない。

やや浅めのバンク角では、スリムなこともあり、同じくらいの車格のインライン4エンジンのバイクよりもよく曲がる。やや浅いバンク角で、しかもフロントにストレスを掛けずにすいーっと、きれいに旋回していくのはとても気持ちよい。
そこからバンク角を深めれば、穏やかに旋回力も増すし、ほぼニュートラルだがわかりやすい弱アンダーのハンドリングだから、ライダーが旋回の意志を込めるのをやめると、自然に起き上がってくる。ここで「起こす」という意識はいらない。

これもわかりやすく、扱いやすく、気持ちのいいハンドリングだ。

だが、これもペースを上げ、バンク角も限界が近くなり、速度も相当に上がって来ると、V7の旋回は安定性の強さが全面に出て、そこからラインを内側に入れてくることは難しい。
まあ、これはどんなバイクでも、誰でも簡単ではないことであるが、限界近くでは旋回性が頑固に感じられるかもしれない。その少し手前までなら、旋回中のライン変更も面白い、自由度の高いハンドリングだ。

4 脱出。

前述のとおり、ペースが低ければ2500rpmからでもくっと右手をひねると車体が反応し、フットワークの良さを感じさせる。

モトグッチはシャフトのくせで、アクセルを開けると車体が右に傾こうとし、つまり、右カーブでは開け開けで曲がっていくが左カーブでは開けると車体が起きてしまって曲がりにくい…という傾向があるが、V7の場合は、ほとんどそのクセは感じない。

コーナーでのトラクションは使いやすく、エンジンと路面との対話を楽しみつつ、コーナーを脱出していける、とても楽しいキャラクターだ。

だが、過度の期待は禁物だ。最新のスーパースポーツのような、路面に黒々とタイヤの跡をつけながら脳みそがずれるくらいの加速Gを感じながら立ち上がり、同時に立ち上がるにつれ、加速度的に風景が後ろに流れ、「溶ける」かのように感じる、あんな陶酔感は襲ってこない。
ゴムのパチンコで射出されるような脱出加速はない。

しかし、激しく路面を蹴り出しながら、猛然と加速していく、生き物のような快感は十分に味わえる。
また、進入速度を遅くしてバンクし、向き変えした直後から開けて行けるようなパターンで走れば、コーナーを進むにつれて加速Gが強まり、それが長く続いてそのまま脱出していくという非常に気持ちのいいコーナリングを楽しめる。

道道28号線を北上すると道は国道451号線にぶつかる。
ここを右折。新十津川方向に進む。
この国道も路面は荒れていて、波打っている。
峠をトンネルで超えると、新十津川に向かって今度は徳富川を下っていく。
吉野という集落を過ぎると、明るい広い谷だ。
田んぼや畑を見ながら、道は進む。

少し風景が開けたところでゆきかぜを停めた。

2014/7/8  8:04  ワインディングを20分ほど走った後のタイヤ

2014/7//8 8:04 同じく、後輪
約1年、5000km走った前後タイヤはまだ溝が残っている。
通勤メインで「走り」にも滅多に行けないので、タイヤのエッジ付近は「ひげ」がまだ残っている。

タイヤにしっかり熱を入れたのも久しぶりだ。
グリップ力は相変わらず高く、まったく不足は感じない。
ハンドリングの悪化も感じない。(しかし、慣れもあるかもしれない。新品にしたら驚くかも)
「ピレリスポーツデーモン」は評価の高いタイヤだが、実際に使ってみても高い評価に納得がいく結果になった。

2014/7/8  8:41
新十津川を国道451で下り、石狩川の平野に出て、国道275号線にチェンジ。さらに北上した。
道の駅「田園の里うりゅう」で小休憩。
北の方角は雲が厚い感じで曇っている。

2014/7/8 8:54
北竜町市街地。完全に曇り空の下に入った。
2014/7/8 9:03
国道275をさらに北上、沼田町からは道道867号線に入った。
少し北上すると、JRえびしま(恵比島)駅がある。
ここはもう何年前だろうか、朝の連続ドラマの撮影地となったところだ。
えびしま駅には今もドラマ上の架空の駅名「明日萌(あしもい)驛」の看板がかかっている。

2014/7/8 9:04
駅の向かいにある撮影に使われた建物。
今、駅前にはほとんど家もない。

さあ、ここからさらに北上する。
道道867と、道道126、742、そして国道239と走り継いで、もう少し高速寄りのハンドリングテストをしてみよう。
もうちょっとペースを上げるよ、ゆきかぜ。
お待たせ、じゃじゃ馬レディ。思いっきりかけっこしよっか。(つづく)

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