2018年6月24日

MotoGPブレーキングシーンについて(1)

この5年くらいポピュラーになっている、コーナリング前のブレーキングでの内足外し。
どうしてするのか、どんな効果があるのか、考えていきたいのですが、その前に、
MotoGPブレーキングシーン、そのものについて、ちょっと確認しておきたいと思います。
ブレーキングのハードさは、GP500ccクラス時代よりも、相当に厳しくなっています。





上の動画はYouTubeの「MotoGP」オフィシャルから、
*上の動画をクリックすると、動画表示はされずに、YouTubeで見ることを選択しないといけなくなるようです。そのままYouTubeへ飛ぶか、下のリンクからYoutubeの動画へ飛んでください。
https://www.youtube.com/watch?v=zy6cvHsb9RQ

タイトルには、
Jorge Lorenzo’s front brake disc lights up as he decelerates from over 300kph to 80kph for turn 11 at Motegi.(モテギGP、11コーナーに向けて、時速300km以上から80kmへ減速するホルヘ・ロレンソのブレーキディスクが光っている。)(いいかげん訳by樹生)
と書いてあります。
11コーナーは、最もハードでパッシングポイントでもある、裏のダウンヒルストレート終わり、下りからの90度コーナーですね。

ブレーキングの熱でカーボンディスクが真っ赤になるのは、F1ではよく見るシーンですが、MotoGPでも見られるようになってきたんですね。
ぶっといタイヤ、重い車重、ダウンフォースで押さえ込まれてのブレーキングと、熱量の圧倒的に多いF1、MotoGPは車重とライダー合わせても、300㎏未満(250kg前後か)で、タイヤは細い前輪1本のグリップ力に頼り、発生する熱量は、やはりF1に比べれば、格段に少ないのですが、ディスクの容量(容積)が違う(F1の方が遥かに容量が大きい)のと、どれくらいの熱になるかをあらかじめ計算して設計しているので、一概に比べられないのですが、それにしても、モテギはMotoGPの年間レースの中でも最もブレーキングがハードなサーキットの一つ。
それにしてもここまで発熱するとは、すさまじいエネルギー量と言えます。


こちらは同じ、モテギですが、さっきのロレンソが2015年なのに対し、こちらのマルク・マルケスは2016年。フルブレーキングでリヤが浮きっぱなしですね。

僕が熱中していた、1980年代前半は、ホッケンハイムのストレートでランディ・マモラが300.1km/hに達したと、大きな話題になった頃。このころの最低車重は115kg。

今や、最高時速はサーキットによっては350km/hを超えてくる時代。
最低車重は157kg。

運動エネルギーは、重量×速度の二乗なので、現在のMotoGPでのブレーキングでのエネルギー転換の大きさが、かつてに比べると相当なものだとわかります。

ロレンソは、タンク形状が自分に合わないため、ブレーキング荷重に耐えることがきつく、かつては15周以降くらいからパフォーマンスが維持できないと訴え続け、他の改良と合わせてタンク形状を改善し、途端にドカティ初勝利、そして2連勝と、一気に結果を出しています。
本人もタンク形状の改善により、レース全体を通して減速Gに耐えられるようになったといっています。

ダニペドロサは、2014年、2015年と腕上がりの改善のため、筋膜を切る手術を受けています。
あまりに前腕に負担がかかるために、筋肉が膨張し、筋膜の限界を超え、激痛が走ってライディングができなくなるためです。
それほどまでに、MotoGPの運転での身体への負担は大きいのです。
日本では中上貴晶選手が同様に腕上がりの手術を受けています。


やはりリヤが浮いているロレンソ。
レバーの指は二本掛け。ライダーによって、どの指を掛けるかはいろいろ。
猛烈な減速G、タイミングを0.1秒でも間違うと、コーナーでアペックスにつけずに抜かれてしまう。ぎりぎりの緊張と、筋持久力の限界と、あらゆるプレッシャーの中で、走り続けるのが世界GPの世界です。


全身で減速Gにたえながら、精密な荷重コントロールを行うのがGPライディング。
マシンと自分の体重を合わせた荷重を、如何にコントロールして、少しでも速く走るか。

写真のビニャーレスは、右コーナーへ向けてのブレーキングで、あらかじめ体勢を右にオフセットし、右足ブーツの裏をフットペグに突き刺すようにして前方に蹴るように力を加え、左足の太もも内側と合わせ、できる限り減速Gを支えようとしています。
しかし、すべての荷重を支えられるはずもなく、両腕にもかなりの荷重がかかっています。もちろん、理想を言えば、ステアリングはフリーにしておきたいので、腕で体重は支えたくないのですが、そんなことを言っていられるエネルギ―ではないのです。

ここで内足を外す?
少しでも荷重、特に腕には負担をかけたくないのに、身体を支え得るステップへの入力を外してしまうとは、どういうことでしょうか。

これには、諸説あります。
次回、いくつかの説を紹介し、考えてみたいと思います。
(ツーリング記事を何本かはさみます。)

2 件のコメント:

  1. 眩いほどに輝いていた2ストローク時代と、
    そしてある種の兵器と表現しても良いような
    最新のマテリアルで先鋭化された
    現代のMotoGPマシンとの比較に始まり、
    専門誌の的確な分析をみているような
    読み応えのある内容で
    続きが本当に楽しみです。

    それにしてもカメラマン諸氏の
    なんと素晴らしい仕事ぶりでしょうか。
    樹生さんのセレクトとあいまって
    思わずため息が漏れてしまいます。

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    1. 迷走さん、ありがとうございます。
      この連載は、長くなりそうです。
      内足外しは、本当に諸説あって、決着がついていない技術なのですね。
      また、今年になって内足外しにも新たな傾向がみられるようになってきたと
      私は感じています。
      どこまで書けるか、ゆっくり、とぎれとぎれになりますが、書いていきます。

      写真、本当にすごいですね。
      動きが読めないと、撮れない…つまり、相当にライディングを理解していないと
      (もちろんカメラに収めるために…という意味で、ですが)
      撮れない写真だと思います。
      プロは、やはりすぎものですね。つくづく感じます。

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