2020年6月15日

逆操舵再び(0)

ダンボ1号さんからコメントいただきまして、
「youtubeで片山敬済さんがプッシングリーンを推奨されている動画を見ました。
 常にリーンアウトでライダーの上半身は地面と垂直が良いとのこと。」
「樹生さんは、片山敬済さんがプッシングリーンを推す理由はどこにあると思われますか?」

「プッシングリーン」…「押して倒す。」
右にバイクを倒したいときは、右のハンドルバー(グリップ)を前に押し、
左にバイクを倒したいときは、左のハンドルバー(グリップ)を前に押して、
バイクを傾ける(=リーンする)というもの。
これは、昔からよく言われていた「逆操舵」というテクニックです。



まずは、片山敬済氏がその説明をしている動画を。
片山敬済氏のYouTubeチャンネル、『Ride? バイクチャンネル』の中の
2019/09/18にUPされた動画、
「コーナーでバイクを簡単に寝かせる方法」
がそれです。


ここで、片山氏は「小手先のテクニック」、「とっても簡単」、「初心者からベテランまで、誰にでも」、と言っています。
また、「レーシングテクニック」だとも言っていますし、
「倒し込むきっかけのテクニックだ」とも言っています。

私ごときが評するのはおこがましいにもほどがあるのですが、すべてそうですね。
片山氏の言の焼き直しになりますが、
逆操舵は、
「右に曲がりたいとき、右のハンドルバーを前に押してハンドルを左に切る」から
逆操舵というわけで、これは、座ったまま、腕先で、感覚的には《掌底》でになりますが、ハンドルバーをすーっと、ゆっくり少し前へ押す。それだけです。
すると、他に何もしなくても、バイクは右に倒れてきます。
バイクのリーンの方法はいろいろありますが、よく言われているのが
「逆操舵」、「イン側ステップ荷重」「アウト側タンクを膝で押す」などです。
私は、「もたれかかり」を推奨していました。(今もですが)
このことは、旧ブログのライテク関連をご覧いただくと詳しいです。
「ライテク記事インデックスⅠ」から、33~39のリーン動作のシリーズに詳しく書いています。)

本当に手で押すだけで他のことをしなくていいので、「小手先」、「とても簡単」です。
また、これは重いバイクをとりあえず自在に倒したいという「初心者」が最初に「テクニックっぽいテクニック」として学ぶのにもいいですし、ベテランも無意識に他の入力と合わせて使っていたりします。また、車種によっては、そういう操作を前提に作られているものもあると、これはバイカーズステーション誌の指摘です。

「レーシングテクニック」というのも、これはアメリカのキース・コード氏が『Twist of the Wrist』(日本語訳『ハイスピード・ライディング』(小川ヨーコ訳)で書いています。
キースコード氏は、エディーローソン等も育てたと言われる、レーシングスクールの校長で、『Twist of the Wrist』は、まさにレーシングテクニックのバイブル的な本です。
その中で「ステアリング操作は簡単だ。曲がる方向と反対にグリップを押せばよい」(…という内容のこと)を書いています。

バイクを倒す代表的な方法でもある、逆操舵。
しかし、70年代後半から80年代は結構言われたこの方法も、90年代、2000年代となると、だんだん推奨されなくなり、むしろ「しない方がいい」と言われることが多くなっていました。
根本健氏も最初から推奨していませんし、辻司氏もしないほうがいいと言っていました。
柏秀樹氏は、いろいろ組み合わせて、自由に場合によって選べるのがいいと言っています。(そりゃそうだ。)
和歌山俊宏氏は、推進派でも否定派でもありませんが、あえてどちらかと言えば、否定派。

なんといっても、曲がりたい方向と反対側にハンドルを切って、フロントを「こじる」わけですから、不自然な入力がなされ、効率は本当は落ちています。(…が、この操作は実際に簡単にすばやくよく寝るので、他の操作ができないなら、これが一番速く効率的と言えます。)グリップ力も無駄に消費しています。

しばらく、誰も推奨していなかった逆操舵、2019年になって、片山氏が推奨するとは。
そして、動画のコメント欄を見ると、意外に多いベテランの「目からうろこ」的反応。

さて、2019年9月に片山氏が推奨している逆操舵。
どうしてか、
そして、それはいまでも有効か。

ライテクオタクド素人として、考えていきたいと思います。

8 件のコメント:

  1. こんばんは。
    記事に取り上げていただきありがとうございます。

    速そうなキメキメの流し撮りといえば、身体はコーナー内側の低い位置にあって膝が出ています。
    そう見えて実はリーンアウトだったりして?
    またはリーンアウトで見事なフルバンクのライダーは多数存在しているのかも?

    修行中のへたくそライダーの私には^^なんだか禅問答のようです。

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    1. ダンボ1号さん、こんにちは。
      一般的には、バイクの傾きに対して、ライダーの傾きが、
      同じものをリーンウィズ
      バイク以上に傾いているものをリーンイン
      バイクより立っているものをリーンアウト
      と、呼びます。
      「ライダースクラブ」の根本健氏は、
      ライダーの重心がバイクの重心よりイン側に入るものをリーンインと呼んでいました。

      根本氏の言い方だと、ハングオフで上体を立てても、重心自体はバイクより
      イン側にいるので、リーンインということになります。
      片山氏は、頭の位置、背骨の向きがバイクの傾きより立っているものを
      リーンアウトと呼んでいるので、
      スペンサーもドゥーハンもリーンアウトになります。

      ここらへんは、学術的なものと違ってライディングの用語は
      定義が正式に、厳密に決まっていないので、
      人によって定義が違ったまま話をしている…それがわかりにくさの
      一因になっているような気がします。
      (「トラクション」もそうですね。)

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  2. こんにちは。
    私の意見ですが、これはもう「バイクの機種によって違う」と思います。
    過去にいろいろなバイクに乗ってきましたし、チョッとだけレースをやったりしていましたが、重いネイキッドバイク等の安定性が強くて寝かしこみの重いバイクは、反対側のハンドルを少し押してバンクのきっかけに使ったりしました。オフ車などは重心が高く寝かす慣性力が大きいので、急コーナーでは反対側のハンドルを押して倒します。モトクロスコースを走る時は、常に逆のハンドルを押し続けています。リアが滑るので逆ハンを切ってる状態ですね。反対に最近のスーパースポーツ系は、これはもうそんなことをしなくても、視線をインに向けて重心移動をしただけでコーナリングを始めます。なにせ速度の遅い時は、ハンドルがぷらぷらして怖いくらいですから。以前、知り合いのGSX-Rに乗せてもらった時は、コーナーで寝かそうと思うだけでスパッと寝るので、これは峠で速いけど、誰でもすぐにフルバンクできて危ないなぁと思ったものです。V7はまだ峠道とかには行っていないので良く分かりませんが、重くも軽くも無く私的には丁度良い感じがします。早く峠道で試してみたいものです。(歳とって怖がりになり最近は飛ばしませんが)

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    1. がたぱしゃさん、こんにちは。
      片山氏も逆操舵について、原理を言うには、バイクのジオメトリーについて話す必要があるけど、面倒くさくて長くなるから…なんて内容のことを話していたような気がします。
      最近の、停止状態での前輪荷重が50%を超え、キャスターが25度を切るようなバイクは、逆操舵はあまり向いてない(使えないわけじゃないけど)と言えるでしょうし、比較的重心からフロントが遠いバイクが向いていると思います。
      例えばダートやコースでの逆ハン時には、リアが外へ出て結果的にカウンターになっているので、フロントを逆に切り続けているのとは違う感じがしています。
      両手でフロントの方向を保持している感じで、逆ハンを切り続ける(内側を前へ押し続ける)のは、ぺ―スが速い時はしないのではないでしょうか。
      車体の向きからすれば逆ハンでも、全体の進行方向と、前輪の向きを比べると、あまり逆に切れていないのがカウンターステアで旋回中の姿勢だと思いますが……。
      最初に倒す時は一瞬カウンターを「切り」ながらガバッとリーンアウトに持って行きますが…。

      V7はクイックではないですが、私としては限界より下の領域では非常に自在度の大きい、楽しいハンドリングだと感じています。
      倒し方も、いろんなやり方を許容しますし、しかも、それぞれに反応がちゃんと違って、フィードバックが楽しいです。
      がたぱしゃさんおっしゃるように「丁度良い」感じが、私もします。

      逆操舵、間空きますが、何回か書いてみたいと思います。

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  3. こんばんは。
    もちろんオフロードを走っている時の「逆ハン」は、逆操舵とは違う操縦法です。
    ただ、リアを流すきっかけとして押す時もありますね。マルケスとか。(^^;)
    私が昔乗っていたZ400FXはもの凄く直進性というか「立ち」が強く、コーナリング中はずっとイン側のハンドルを押し続けていました。そうしないとすぐに車体が立ち上がろうとして大回りになってしまいます。当時はフロントが19インチだったこともあり、今はこんなバイクは無いと思います。最近の普通のバイクでは、逆操舵は、やはり倒す「きっかけ」だけとして使うものだと思います。まあ、いろいろ考えるより実際に走って試してみるのが一番ですね!転ばない程度に。。。

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    1. がたぱしゃさん、こんにちは。
      そうですね。無理しないように、いろいろ自分で試してみる…というのが、
      一番いいように思います。

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  4. それが、最新のSSは「バイクがスゴすぎ」で、マジな話、『あ!コーナーだ。曲がろうかな?』と思うだけでコーナーをトレースします。ウチのSC77がそうでした。
    で、SC82は77とは「異次元の性能」らしいです。どうなっちゃうの?って感じ。いまから楽しみです。

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    1. tkjさん、こんにちは。
      うわ、やっぱりそうですか?
      最新SSにはもう10年以上乗ったことないので、
      進歩してるんですね。
      今から楽しみ? いっちゃいます?

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