開幕から負けなしで10連勝していたマルク・マルケス選手が4位に。同じホンダのダニ、ペドロサ選手が優勝しました。
今年のモトGPは結果だけ見れば第10戦まですべてマルク・マルケス選手が勝っていますが、毎戦激闘の連続で非常に面白いです。
マシン、ライダーともに進歩著しく、特にタイヤ、そして電子制御は、数年前とはもう別物のようになっています。
上のマルケス選手のこのバンク角。
現在のTV中継では、各ライダーのアクセル開度やブレーキング入力などもリアルタイムで映し出されたりしますし、バンク角も表示されるのですが、毎レース、最大バンク角はだいたい58°~60°くらいです。
もう、数年前から「ひじ」(肘)を路面に擦ることは普通になっていましたが、このマルケスのフォームは、今年になってさらに変化。
上体全体をイン側へ落とし込もうとするので、去年は少し張っていたイン側の肘ももう脇が閉まってたたまれています。そうしないと、バンクできなくなるからです。
つまり、車体のバンク角が60°限界なら、ライダーの身体をさらにイン側へ落としてマシン+ライダーの実質バンク角をもっと深くし、その分旋回力を稼ごうという作戦です。
頭の位置はもう、路面から30センチくらいの高さ。
タイヤの接地面を見ても、もうトレッドのショルダーという表現を超えるような状態です。
これで転倒せずに、強い旋回力でコーナーを抜けていく。
アウト側の腕は、大分伸びています。これ以上バンクさせることは難しい。いや、むしろ、深い旋回状態から極力バイクを起こして旋回しているようにさえ、見えます。
この運動エネルギーの大きさと、ぎりぎりのコントロールには、ただただ驚嘆するばかりです。
市販車の場合、オンロードモデルなら、多くの場合、タイヤの限界前にどこかが接地して(たいていはステップの先から伸びたバンクセンサーです)、それ以上バンクできないことを教えてくれます。
実はほとんどの市販車では、力を抜いて普通に乗っている(リーンウィズ)の状態で、フルバンクでの旋回はさほど難しくない、…というか、路面が安定して視界が開けているなら、実はとても簡単です。徐々に慣れさえすれば、ほぼ、誰でもできます。
しかし、この域までくると、だれでも、というわけには行きません。
この状態でも前後タイヤはゆるやかにスライドしており、そのスライド量を、バイクの操作とライダーの身のこなしによって調整し、リヤの方のスライド量をフロントのスライド量よりも少し多めのバランスにして、車体の向きも変えながら、進路を内側へ、内側へと変えていくのです。
さすがにここまでは真似をする気になれない。
バイクを走らせるという基本は同じでも、写真を見ても、スーパースローの映像を見ても、どうやっているのか、旋回Gやバランスの崩れ、回復などの感覚がどんな感じなのか、もう、想像しようにも、運動エネルギーのレベルが違い過ぎる。
そんな次元にまで、進んでしましました。
ブレーキングスライドで向きを変えるなんて当たり前。むしろ、いかにロスを少なくして、タイヤのパフォーマンスをゴールまで保ちつつ、ライバルよりも速く走るか、非常に豪快で、同時に非常に繊細な域で戦っているのが世界GPの世界なのですね。
学ぶべきは、基本に忠実な操作、繊細な感性。
公道上で、低いエネルギー、低い限界でも、その手前でいかにロスをなくし、安全に、しかも実感を持って旋回していくか。
そうした「遊び」は、速度が低くてもできます。
自分の「感性」を研ぎ澄まし、現実を理解し、現実と闘って、安全に走る。
その意味では、限界が遥か、遥か下でも。ライダーのしていることは、モトGPの選手たちと同じことだとも言えるでしょう。
すばらしいレースを見た後は、
自分のライディングを磨きたくなります。
速度を増すのではなく、感性を磨き、より、リアルにバイクとコーナリングを感じたくなる。
そうした意味では、世界GPのTV放映を見ることは、今でも、いや、今こそ、より楽しみを増してきたと言えるかもしれません。
全くおっしゃるとおりです。
返信削除低い速度でも基本どおりに。
さて、上述の「基本」ですが、レーシングライダーのテクニックは本当に参考になります。
出来るだけそれを「真似」する事で、安全走行に繋がる。そう思います。
(公道で、低い速度でね。w)
tkjさん、こんにちは。
削除とてもていねいで、継ぎ目のない操作、極端な姿勢変化を防ぐ体の使い方、
タイヤのグリップを全身で感じながら開けていくその感性…。
どの瞬間にも、繊細なバランス感覚が光っていると思います。
市街地のブレーキングにも、交差点の左折にも、学ぶべきこと、生かせることは多くありますね。
剣士がいかに刀を使うか、に似てくると思うのですが、
バイクをいかに操作するか、自分の動きそのものとしてイメージできるまでに、同化できるか、
整備も含めて、これは果てしのない、でもとても楽しいトライです。