それは、どういうものでしょうか。
ただ遅く走りさえすれば、安全というものではありません、
遅すぎる走行の長時間は、むしろ気持ちを「張る」ことが難しくなり、漫然とした走りがかえって事故を呼び込むこともあります。
もちろん、暴走するような行為はダメです。
では、どういう走りなのか、それは、滅多にみられるものではありません。
10年ほど前まではあった、プロが行動を飛ばしている動画は、やはりアマチュアが走りのイメージを膨らませるには少し、速すぎるものでした。
もう何度も紹介している動画。
これは日本国内ではなく、イタリアやフランスで、公道の速度制限が100㎞/hのところが多いですので、撮影当時、長い直線でのごく一瞬のオーバースピードを除けば、全く違法行為はしていないと思われます。
それでも「飛ばす」片山敬済氏と、追う根本健氏。「過激」な走りは、痛快です。
でも、これを日本で再現はできません。
技術的にも、法的にも。
素人が形だけ真似て、スピードとフォームだけコピーしようとすると、危険なことになります。これは、そういうことをしない「大人向け」のVIDEOなのです。
しかし、この動画とて、何度も繰り返し見、また、片山氏のレース時の走りなどとも比較してみると、レースなどとは全く違う、安全マージンを大きくとったはしりだということが分かります。決してフルバンクはしていないし、限界ブレーキングにも程遠く、余裕を大きく持って操作しています。
昔の日本の峠小僧とは、全然違う、大人の走りなのです。
ところで、最近のプロ動画の走り動画は、ほとんど公道ではなく、また公道上の動画は、一部、いろんな操作の実演でやや無理な(もちろん、敢えてやっているわけですが)ものがある以外は、乱暴にあえてひとくくりに行ってしまえば、おとなしすぎて、おもしろみのないものになっているような気が、私はしています。もちろん、動画のねらいに沿っていれば(例えばツーリング動画など)、それが最適なのですから、全然文句をいう筋合いではありません。
このあたりのニュアンスは、非常に伝わりにくいのです。
法定速度はどんな時でも絶対、という人には、何を言っても言い訳にしか聞いてもらえなかったり、やはり速度を下げたら安全でしょうと言われたりします。
じゃあ、そうでないとしたら…と、考えると、いまだに多いのは、マシンの力任せに、かなり乱暴な走りをしてしまう場合です。
これも、本人たちは「二輪の機動力を生かし、マージンをとっているから安全!」なんて思っていたり、言っていたりするので、これは言ってることが同じだけで、実際にはただの危険走行じゃないか……と、思うことも多くあったりするのです。
では、どんな走りがそうなのか…。
これは、実際、一緒に走ってみないと、その人が安全や走りについてどう考えているかは、わからないことが殆どです。
言葉では同じことを言っていても、その実態には、本当に雲泥の差があることが多いのです。
ここで、勝手に紹介してしまって大変申し訳ないのですが、
YouTube上で、私の考える、「公道上の、気持ちよく、安全マージンのある走り」を見ることができる動画があります。
それが、下の動画です。
私のリスペクトする「迷走ライダー」さん、の2017年の走行動画なのですが、細い公道を走っていく姿が13分18秒間、見られます。
ルートについては、動画の概要欄に迷走さんが以下のように書いています。
万座プリンスの駐車場を起点に
毛無峠到着直前まで、
県道446号線から県道112号線を
辿る行程です。
知人のWR にGoPro を
搭載してもらってます。
前を走っているのが、
自分のR1200R です。
この動画をアップした当時、
You Tube の使い方が良くわからなくて
画質が劣悪なのと、
初めて走る道だったので、
ラインが甘々でヒドイのはご容赦ください。
好きなルートの基準は、
道路の両側に電信柱が無いこと、
メジャールートでは無く
交通量が少ないこと、です。
浅いバンク角、なめらか、緩やかだけれど、しっかりとした加速・減速。
マージンは大きいけれど、決して弛緩して走っていない。
道路のうねり、舗装の荒れ、そしていきなり現れるバンプ、路面上の砂など、ご覧になったでしょうか。
そうした状況にも対応して、決して破綻しない、その適応能力の高さ、それは、やはりマージンの大きさ、初めて通る道で、先が分からない中でブランドの向こうに何があっても対応して安全を確保するのだ…という精神性がまず見て取れます。
後ろから追っているヤマハのWR250Xも、かなりの腕です。何といっても、この車間距離の取り方。GoProHERO4の広角レンズにより、かなり離れて見えますが、実際には、10m~15mくらいの距離には付けていて、20m離れるのはまれです。
WRならではの長くしなやかな足回りで、路面の凸凹や、荒れ、うねりなど、急に現れる路面の「危機」を越えながら、遅れず追随し、しかも車間を適切な距離に保つのは、ただものではありません。
そして先行する迷走さんは、BMW R1200R。あの重いリッターネイキッドでこの狭い道をこのペースで自在に走っているとは、驚愕に値します。
迷走さんはミラーを見ながら、相手を引き離し過ぎないよう、でも、だらけた走りにならないように、実は相当に濃厚なコミュニケーションをミラー越しにWRのライダーと取りながら走っています。この2台は、ただ前後に走っているのではなく、完全にセッションしています。
そしてあの安全マージン。
決して深くないバンク角。
決して無理していないペース。暴走では決してない。
でも、たぶん、普通のライダーがついて行こうとしても、行けないペースです。
いや、普通のライダーが同行して一緒にいたら、ミラーで確認しながら、迷走さんが後ろが無理しないペースにペースダウンして走ったことでしょう。
それくらい、この走りには、マージンがあり、風格すら、私は感じます。
それだけでなく、景色のいいところでは、極端にペースを落としてスタンディングして風景を展望しようとしてみたり、ごく一部、ちょっとペースを上げてみて、また、元のペースに戻したり、走りに「遊び」があります。
この「遊び」も実はとても大切なもの。
走りの意識を高いレベルで保つには、同じテンションの長時間の持続はよくない。
適度に変化があったほうが意識レベルを高く保てます。
「遊び」は無駄ではなく、安全のためにも、ライディングプレジャーの為にも、非常に有用なものです。
初めて走る道だったので、
ラインが甘々でヒドイのはご容赦ください。
と、迷走さんは言っていますが、ツーリングで100%狙ったラインというのはそもそもあり得ません。先がわからないのですから、いかに道を読むか、というのも旅ライディングでの大きな楽しみの一つで、そのヒット率を上げていくことと、当然ある「外れ」たときのリカバー力を上げていくことも公道ライダーのライテク向上の大きなテーマであり、喜びの一つです。
ぐだぐだ書いてしまいましたが、今回もう一度迷走さんの動画を拝見して、
唸ることしきりでした。
同時にとてもうれしくなったのです。
やっぱりすごい!
全然すごそうでないのですが、「野球の名手にファインプレーが少ない」というのに似た、懐の深く、広いライディングを見ることができました。
普通のライダーには、このペースは、そう見えないでしょうが、速すぎて、たぶんついて行こうとすると、ただ飛ばす走りになってしまうと思います。でも、公道ではそれはダメです。
かといって、速すぎるわけでもない。暴走してるとは、決して言えない安全マージンの大きさ。
「公道上の、気持ちよく、マージンのある走り。」
迷走さんの動画は、それがどんなものであるか、私のイメージを、具体的な姿として見せてくれています。
*Thanks to "meisourider".
樹生さん、ご無沙汰しております。
返信削除お元気でお過ごしですか。
閉塞感ばかりが漂いがちな世の中、
激しい雨続きで全くバイクに乗れない日常、
心にトゲが刺さったり
ささくれてしまうようなことばかり
多い日常…
自分で自分をコントロールするのが
難しいくらい心が波打ってしまい、
ふと気づいたら久しぶりに
風のV7ページを訪れていました。
それは自分にとってこのページが
単なるモーターサイクルブログでは無く
一服の清涼剤でもあるからです。
そんな風にある種の癒しや
夢中になって埋没できる時間を求めて
リンクをクリック、
そしてトップページの記事を
目にした途端
ん?あれ?
何かの間違いかな…と思って
何度見直してみても、
そこには懐かしい自分のペンネーム?
が記載されているではありませんか。
さっそく貪るように
拝読させていただいて、
あらためて昔の動画も見直し
再度、記事を読み直してから
こうしてコメントを書いています。
神奈川に住んでいた頃の事です。
長年お世話になった
近所のバイク屋さんに集うマシン達…
どのマシンもその手入れの行き届きよう、
そして誤魔化すことの出来ない
タイヤの使われ方に
いつも感しきりでした。
そこで良く言われていたのは…
いかにバイクを傾けずに
リスクを負うことなく
キレイに
そして思うように
曲がって行けるかが
大切だよね
…というような内容でした。
それに影響されたのか、
特に公道では
出来るだけ寝かさない走りを
心がけてはいます。
それにしてもビックリ、
それを感知しているかのような
見てきたかのような、
まるで一緒に走ったかのような
おそるべき分析能力に、
さらに拙い動画を
取り上げて
このように大切で
意味のある記事として
まとめていただいたこと、
大感謝しているのですが
上手く言葉にできません。
驚くのは私が常々ライディングに対して、
ツーリングに対して抱いている
様々な思いやイメージ
けれども自分のブログでは
上手くソレを表現することが難しくて
できなかった微妙なところ…、
言ってみればグレーな部分まで含めて
誤解を恐れずに樹生さんが
明確でわかり易い文章に
仕上げて下さっている点です。
風のV7を訪れていつも感じる
敵わないなぁ…は
まさにここに尽きます。
目指している所を理解してもらい
汲み取っていただけたことも、
本当にありがたいなぁと思います。
もちろん、素敵な写真や動画
大人の読み物として
手応えのある情報や
含蓄ある文章が
その最大の魅力であることは、
何よりもここに集う
読者の皆さんの方が
よくおわかりのはずですね。
ただ、一点
樹生さんであれば
余裕を持ってついて来れるはずです。
そんなに速くありません。
長々、失礼しました。
おかげさまで
ひととき幸せな時間を
堪能することができました。
ありがとうございます。
迷走さん、お久しぶりです。
削除コメント、ありがとうございます。
元気でやっています。
「私たち」が感じている閉塞感…。
それは新型コロナウィルス感染や、
天候異変が引き金にはなっていますが、
どうやら、それらが露呈させただけで、
実はじわじわと、私たちの周りや、私たちの中に
蓄積されてきていたものであるように思われます。
今年ほど走ることを渇望する年はなく、
また、今年ほど、走り出すのに
力の要る年もありませんでした。
僕が欲していたのは、
たとえ遁走であっても、走り出す力、
走ることの力を信じさせてくれる、
「生への肯定力」でした。
じわじわと、包囲されていく閉塞感は、
疲労感とともに年々感じていましたが、
昨年、自分でも意外なことにアクションカムを買い、
YouTubeに動画を投稿するなんて
「流行り」のことに手をだしてしまったのも、
昔、2007年頃、やはり閉塞感を打破しようと、
「がらにもなく」、インターネット上で「ブログ」なるものを
始めた時と、同じ程の「打破」への焦りが、あったのかも
しれません。
そんな時に、励みになるのは、
自分が信頼し、またはリスペクトする人たちのことです。
性別、年齢、分野を問わず、その人たちの存在が、
僕を励ましてくれます。
迷走さんのブログはほぼ10年間
毎朝読むのが日課みたいになっていて、
更新が終わって1年が過ぎましたが、
迷走さんの、バイク、レース、ライディングに関する深い造詣、
熱い(もしくはクールな)思いは、
変わらず僕の憧れでもあり、励ましでもありました。
勝手に人の動画を紹介して、しかも勝手に
ライディングを解説するという、
失礼の二重奏なブログ記事になってしまい、
申し訳なく思っています。でも、
ライディングに関しては、外れていなかったようで、
ほっとするというよりも、とても嬉しい気持ちです。
「やっぱりそうだったか」
と、言えば、おこがましいのですが、
さらにおこがましくも言うと、
自分に似ているタイプのライディングを見つけた
歓びというものが大きかったように思います。
年齢とともに、状況とともに、自分のライディングも
変わっていきますが、
機会が減っても、距離が伸びなくても、
自分らしく走っていけたらいいなと、思っています。
迷走さん、コメント、
ありがとうございます。