2015年6月23日

Kと走る。(1)


Kは、学生時代から、30年来の友人だ。
そのKと、6年ぶりくらいに一緒に走ってきた。



待ち合わせは、土曜日、朝10時。支笏湖のポロピナイ駐車場。
朝10時なんて遅い待ち合わせ時間は、初めてかもしれない。
お互い、仕事がきつくて、金曜日の夜も仕事を抱え、疲れも全然取れていない。
朝から無理はできないということでの10時集合となった。

今回のKとのツーリングは、集合時間、場所、宿泊の宿だけが決まっていて、あとは会ってから、適当に決めつつ走ろうという、いいかげんなものだ。

きっちり計画しないと気が済まない人には、耐え難い無計画性だろう。
朝も10時だし。

さて、土曜日朝、荷造りをして8時半に出発。雨の予報は出ていないが、曇りの予報はあり、一泊なので着替えや雨具もしっかりいれ、ゆきかぜにはタンクバッグとリヤのバッグと、二つを積み込んだ。

札幌市街地から支笏湖へとまっすぐ南下する国道453号線をいくことにする。
市街地が終わり、いよいよ山の中の道に入る、入口に常盤パーキングがある。

そこへ寄ってトイレ休憩をし、荷物をリヤシートに縛り付けるゴムひもの状態をチェック。
少し締め直して、ブレーキング時に荷物が前方、ライダーの方へ滑って来ないようにした。

9時30分。

あと30分あれば余裕で着く。

ゆっくり発進した。



だんだん天気も良くなってきている。
少し前に遅いファミリーカーがいて、車の流れに栓をしていた。
すでに6~7台の行列になっているので、一気に追い抜くのは無理だし、黄色ラインでは原則追い抜かない習慣になっているので、むしろゆっくり、車間を大きくとってのんびり行くことにした。

すると後方から次々に車やバイクが追い付いてくる。
そのたびに左によって先に行ってもらいながら、ゆっくりすすんだ。

しばらく行った所で、また後ろから一台のバイクが近づいてきた。
しかし、そのバイクは僕の直近まではすぐに来ずに、50mほど後ろまで来たところで僕の速度に合わせ、迫って来ないで、巡航に入った。



彼が追い付いてきた速度に比べると、たぶん30kmくらい遅い速度だ。
僕はゆっくり行くつもりなので、左ウィンカーをつけて道をゆずった。
しかし彼は、しばらく来ない。
追い抜くつもりはないのか、…と思っていると、僕が道を譲っていることに気づいたのだろう、
「譲ってもらわなくても、ゆっくりでもいいんですよ。」と言いたげな感じだったが、
逆に道を譲られたのだから、早く抜いた方がマナーか、と思い直したように、
挨拶をくれながら、僕を抜いて行った。

その排気音は、きれいで重厚なツインサウンド。
そしてその佇まいは、後ろから見るだけだが、どうやら古いバイクだ。

W650やW800ではない。
新しいトライアンフでもない。
本物の古いトライアンフボンネでもなさそうだ。

なんだろう?

カワサキの古いツインか。昔のWシリーズか。

ドドドド…と響くいい音。しかし、音量はそんなに高くない。
そしてきれいな乗車姿勢。
なにより走りがきれいだ。

そう思っているうちにそのバイクは遠ざかっていく。

そのバイクもやがて前の車の列に当たり、やはりゆっくり走行になって、再び僕の視界に入ってきた。

今度は僕が間隔をあけて追尾する形になった。


その人の走りはとてもきれいで、見ていて気持ちよくなってしまうようなものだった。
上の写真からもわかるように、ラインが美しい。
極端な屈曲点を持たない、張りのあるライン。
ここからインへ入っていくラインは、完全に道を読み切ったものだ。

これは走っていて楽しいだろう。

しばらく見ていると、シフトダウンのタイミングで右足が動いている。
右チェンジ!
キャプトンタイプマフラー。
直立空冷ツインの古いマシン。

…、メグロか、またはW1だろうか。

そう思いながら走っていると、支笏湖についた。

ちょうど10時の到着だ。

その人もポロピナイの駐車場に入った。



ここでコンパクトカメラの撮影モードダイヤルがずれているのを気づかずに撮ってしまい、2枚ほど白黒写真になってしまった。

そのバイクは写真の左端。真ん中はゆきかぜ。右端はあとから来たCB1300だ。

待ち合わせのKはまだ来ていなかった。

学生の頃から、待ち合わせに10分くらい遅れてくるのは、よくあったことだ。おたがいにそうだから、特に気にはならない。遅れてはならない待ち合わせの時は、必ず間に合うヤツだから、こういう時には少しルーズになったほうがいいのだ。

さて、僕を抜いて行ったライダーの方と、少し話ができた。



僕より10くらい年上だろうか。
素敵な紳士だった。
マシンはカワサキのW1。1970年型を1975年に中古で購入し、以来40年、乗り続けているという。
「いつまで乗り続けられるか…と思うんですよ。」とおっしゃっていた。
変な力が入らず、笑顔がとても素敵な方だった。

ベルスタッフのジャケット、使い込まれたクシタニのゴートグローブ。
白のジェットヘル。

40年走り続けたそのマシンは、まちがいなく人生の半分以上を共に過ごしてきた相棒だ。
古いけれど、とても美しいマシンだった。
新品にはない美しさがあった。



挨拶をして、その片は売店の中へ歩いて行った。
僕はKと待ち合わせ。

支笏湖は今日はよく晴れて、支笏湖としてはめずらしい、あかるい表情をしていた。

家族連れやカップルもたくさん来ていた。

陽射しの強さを感じて、帽子を持ってこなかったことを後悔し始めた頃、

Kがやってきた。


ヤマハ、TT250RAID。
白いオフロードバイクがKのバイクだ。
Kは1993年からそれに乗っている。もう20年以上の付き合いだ。

今日はエンジンのかかりが悪くて遅れたと言う。
まずは互いに挨拶をして、僕は缶珈琲を一本、Kは持参したペットボトルの中身を飲みながら、これからどうするかを売店のテラスの椅子に腰かけて話した。

10時20分。

久しぶりのKとのツーリングが始まる。 (つづく)

2 件のコメント:

  1. KAORI2015年6月25日 20:48

    樹生さん こんばんわ~
    あ、いいですね!やっぱりツーリングは樹生さんの基本!
    荷物くくって、ソロもいいですが、気の合う仲間と少人数で走るのは
    楽しさが格別です。

    W1の方はときどき軽いリーンアウトに細身の長身をふりながら、
    まるーく滑るように走ってゆかれます。
    ワタシはW3でも原付2種でもご一緒している人です。
    コロナのツーリングバックも40年使ってるそーなので
    おそるべき年季ものです。ふつうここまで使い込めません。
    わたしもいつも感心しています。
    ひとそれぞれ、いろんなラインディングライフがあり
    素敵だなと思います。

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    1. KAORIさん、こんばんは。
      W1の方、KAORIさんの知り合いだったのですね。
      にこやかで、変な力が入らず、走りもとても美しい方でした。
      それぞれにバイクライフがあり、そのステージもまた、時とともに変わっていく…。
      僕のバイクライフも、少しずつ変わっていくんだと思いました。

      今週からしばらくは、また仕事三昧で忙しい夏になりそうです。

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