以前のブログ『聖地巡礼―バイクライディングin北海道―』の2007年11月13日の記事に載せていた、僕が23歳の時の詩(?)です。
DT50
ごめんとは 言わない
夜中に君を一人残して男友だちの家へ遊びに行った
映画帰りの喫茶店 みつめる君の瞳を受けとめられなかった
涙をこらえてふるえてる君を抱きしめてやれなかった
長い休暇に3通しか手紙を出さなかった
さびしがりやで泣き虫の君に嘘をついた
ごめんとは 言えない
あれから秋が来て冬が来て春が来て 僕はバイクを買った
青い中古の DT50
DT50で僕は走った
交差点の真ん中でエンストした
側溝に落ちて足首を捻挫した
時速60キロでブロック塀に突っ込んだ
トラックの下を滑り抜けた
レバーを折った
ミラーを割った
キャブレターのセッティングを変えた
マフラーの中身を抜いてバーナーで焼いた
崖から落ちた
前フォークを交換した
アスファルトにたたきつけられて吐いた
雲が山間から生まれる瞬間を見た
土砂降りの林道を押し歩いた
夜通し走って海峡に上る朝日を見た
月灯りの下エンジンを止めて滑走した
鼻血でタンクを赤く染めた
雪の降る湖畔をこごえながら走った
1万3千620キロ 僕は
君の泣いた訳がやっとわかったような気がする
ごめんとは言わない
ありがとうとは言わない
そんな言葉で語れない 僕らの歴史があった
君が笑った
君がはしゃいだ
君がふり向いた
君が黙った
君が泣いた
君がいた
僕がいた
僕は走った DT50で
独りに なるために
(1985.3)
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