わかっていても、仕事は待ってくれず、しかも、それが責任ある仕事だと(責任のない仕事などというものはそもそも存在しないが)、手を抜くことができずに、やがてオーバーワークで倒れていく。
そういう事例を、たくさん知っている。
自分も、かなり危険なライン上を、もう何年も走っているような気がする。
なんとかなっているのは、周りの理解と、家族の支えと、オートバイのおかげだと、自分では思っている。
それでも僕は良い方だ……。それは本当で、僕より厳しい条件で働いている人は、僕の職場でもたくさんいる。でも、その言葉が、自分の苦しさを訴えにくくする。
みんな、そうやって倒れて行ったのだ。
もう、年齢的にも機関車のような働き方はできないのだと、しっかり自覚すべき時。
バイクを替えたように、仕事の仕方も変えなければらないのだ。
鉛のように思い、身体と心。疲労を抱えたまま、日曜日、走りに出た。
「春の丘を、見に行こう。」
2016/5/15 6:01 札幌市中央区 |
僕はこの二日間、自由に時間が使えた。
今までなら、土曜日に走りに行き、心を満タンにして帰ってきて、日曜日に仕事をしていた。
しかし今回は、その絶好の土曜日に自宅にこもって仕事を片付けた。
そうしないと、日曜日にはできない気がしていたのだ。
空けた日曜は、予報によると午前中はよく晴れ、午後から雲が広がるが、雨の心配はない。
昨夜のうちに給油してガソリンは満タン。
20年前の暖かなクシタニのアンダーウェア上下を着て、その上に「クシタニカントリージーンズライド」を履き、上はウールのシャツの上にフリース、その上からペアスロープの防寒ジャケット、「RT-30W」を着た。ダイネーゼの脊椎パッドをジャケットの下に背負っている。
グローブはこの冬にホームセンターで買った、雪かき用の防水防寒安物グローブを着け、ロングゴートグローブは、タンクバッグの中に。
出発は5時半すぎ。
4時に起きた。いつもなら、さっと準備してとりあえず走り出し、しばらく走ってからコンビニで朝食とするのだが、今日は朝、ほんの少し仕事のメール処理などをして、4時半からパンとコーヒーの朝食を摂った。もう外は明るい。路上で朝を迎えるタイミングは、とうに過ぎている。
我が家の軒下に今年、スズメが巣をかけている。そのスズメたちの声を聞きながら、ゆっくりパンを齧り、珈琲を飲んだ。
トイレに行き、どこに行こうか、最終的なルートを決められないまま、あれこれ考えながらゆきかぜを出す。
タイヤの空気圧を計る。前2.6kPa、後ろ2.7kPaは、指定空気圧より前後とも少し高い。
落とさず、そのまま行く。
左のクラッチレバーのホルダーを8mmレンチで緩め、1cmほど内側へ追い込む。レバーの指のかかりをぴったりにするためだ。
これは昨日のうちにしておきたかったのだが、仕事と疲れでできなかった作業だ。
本当は出発前にこういう作業はしたくない。急いで何かをミスったりしたくないからだ。
でも、今日は少し走るつもりだから、少しのことでも調整しておきたい。
ゆっくり、確実にと自分に言い聞かせながら作業し、レンチを車載工具に積んだことをしっかり確認する。
なんやかやで、出発は5時半過ぎになっていた。
ぱっと飛び出すリズムではない。
が、それが現状だ。
じっくりと、安全に、確実に。無事に帰らなければ、バイクライフを続けられない。
2016/5/15 6:46 岩見沢市街 |
給油と昼食を考えると、高速には乗れない。
早く郊外へ行きたいが、今日はオール下道。
札幌市街地から国道275で石狩川の橋の手前まで行き、橋のたもとを右折して国道337に切り替えた後、国道12号線に合流して岩見沢市街地までまっすぐ走った。
国道12号線と言えど、休日の朝6時台、この時間帯なら空いている。
朝、気温は7度。
防寒装備が効いている。
順調に岩見沢へ。
市街地を避けるバイパスに乗らず、今日は市街地をまっすぐ抜けてみる。
途中で、後ろから、大きなスポーツタイプのスクーターが来ていた。
今日は、誰とも話をしたくない。
独りで走りたい。
そんなオーラが僕から出ていたのだろうか。
信号待ちでも、僕のとなりにくることもなく、後ろを走る時も車間を広く保って、
そのスクーターのライダーは、やがて僕とルートを分かち、見えなくなった。
ちょっとほっとしながら、でも、この心性はいかんなあ…と反省もしつつ。
旧国道12号線。岩見沢市街地の中心を貫く道道201号線を走って、再び国道12号線に合流したら、そのまま交差点を直進。
名前もついていない、住宅地の中を抜ける道を、ゆっくり通らせてもう。
家々の庭に植えられた、いろんな種類の桜が満開になっている。
早咲きの桜は散ったのか。
そういえば、岩見沢はバラの街だったと思い出す。
早くからランニングの人、庭をいじる人、家庭菜園の世話をする人。
幸せな住宅地の風景。
その中を通らせてもらうには、爆音は気が引ける。
大きすぎない車体に、大きすぎない、ポコポコというちょっと気の抜けた、V7のノーマルマフラーの音がちょうどいい。
さっきは、スクーターの接近にいつになく緊張したくせに、朝の住宅街を通り抜けるなんて、なにが独りになりたいだ。
矛盾もいいところだ。
どうも日常の喧噪感が神経に残っているせいか、ぱっと気分が解放されない。
そう、ツーリングでの気分の解放は、いつも走り出してすぐ来るわけではなく、かなりの助走が要る。
長い時には半日くらいかかることもある。そう単純に、物事は運ばないのだ。
行き止まりのT字路を右に、すぐに道道917号線に当たる。左折して、917号を三笠。幾春別方面へ。
すでに7時をまわろうとしている。
いつものツーリングよりも2時間弱遅いペース。
今日はどんな一日になるのだろう。
まずは最初の休憩予定地、三笠市幾春別のバスステーションを目指した。(つづく)
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