第1回はハンドルバーを押すことでバイクを傾ける「カウンターステア」についてでしたが、
第2回の今回は、ステップ荷重などの下半身によるバイクのリーン動作についての実験です。
注意!*************************************
本ブログ管理人、執筆者の樹生和人は、バイクに関してまったくの素人であり、その説の正しさは何ら保障されていません。
読者のみなさんは、絶対にうのみにせず、もしも書いてあることを試すときにも、かならずご自分の状況下での有効性を考えたうえで、ご自分の安全判断の元に行い、絶対に無理をしないでください。
本ブログはこれを読んだ各ライダーの実際のライディングに関して一切の責任を負いません。
言うまでもありませんが、ライダーは、その運転において、自分の命を守るのみならず、周囲の人を巻き込まぬように安全に走る義務があります。命を守る運転を。
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カウンターステアによるロールの何より簡単なことは、力を入れる方向などに神経質にならずに、曲がりたい方向の内側のハンドルをそっと前にちょんと押して、一瞬逆ハン状態をつくってやれば、バイクの方で勝手に傾いてきてくれることだ。
ハンドル操作以外は何もしなくてもいいので、変に力むこともない。小さな力でいいので(決して大きな力でやってはいけない。転倒する。)、長距離、長時間でも疲れない。
しかし、カウンターステアはフロントをこじっているので、リスクもある。
ではどうするか。
「ステップ荷重」と「外側タンクを押す」というのが、よく言われる。
そこで実験してみよう。
この実験は公道でなく、広い駐車場や教習所など、安全が確保された場所で行う。
まず、ゆっくりしたワルツのリズムに乗るつもりで、左右にバイクをリーンさせて、直進路で蛇行運転をしてみる。
イチ、ニイ、サン、イチ、ニイ、サン、…の、「イチ」がバイクの倒れた状態、「ニイ、サン」でバイクが起きてくる…、というリズム。「イチ」の時に傾き、アクセルが開き、傾きが止まると同時にぐりっと向きが変わる。「ニイ、サン」はふわあっと自然に起きてくる感じ。
免除試験のパイロンスラロームは感覚が狭くリズムが速すぎるので、三倍時間をかける感じでやってみる。速度は30kmくらいでよい。
あまり意識しなくともできるはずだ。
これを60kmでやってみる。(くれぐれも周囲の安全を確保したうえで、かつ安全装備もしっかりして。)
30kmの時とは別のバイクのように重くなっている。
30kmの時と比べると、起こして倒すときになんらかのはっきりした入力が必要な感じになっている。
慣性は速度の2乗に比例して働くから、速度が2倍になれば慣性は4倍。単純に言えば、4倍重くなっているわけだ。
コーナーへの進入で速度を落とした方がいいのは、単に遠心力との兼ね合いだけでなく、直進状態から旋回状態へとバイクの状態を変化させるときに、速いとそれが圧倒的に重く、難しくなってしまうからだ。
限界の遥か下、バイクに助けられてただ走らせてもらっているときには、バイクはどんな操作でもだいたい許容してくれ、うまく曲がったり、止まったりしてくれる。
しかし、速度が速くなったり、雨など、条件が厳しくなったりすると、ライダーがバイクにいかに無理なく正確に入力してやれているかがものを言ってくる。
リーン速度を上げて行ったり、大きな慣性の働いている状態でバイクを傾けるときには、バイクの傾く動きに寄り添った、適切な向きの入力が必要だ。
説明のためにちょっと脱線するが、センタースタンド掛け、うまい人はひょいっと掛けるのに、自分がやるとものすごく重い。あの人はなんて怪力なんだ…と思ったことはないだろうか。
何を隠そう、僕は限定解除試験の1回目、引き回し、引き起こしはできたのにセンタースタンドが立てられず、乗車すらできずに不合格で落ちたことがある。
本で読んだ通りに思い切りスタンドの足掛けの部分を踏んづけ、シートレールを必死で持ち上げようと渾身の力を振り絞ったのに、全然上がらなかった。
恥ずかしさと情けなさで、消え入るように試験会場を後にしたのだ。
家に帰ってSRV250のセンタースタンドをかけてみる。何回やっても一発でかけられる。
「くっそ、タンクに砂が入っていて、センタースタンドの足掛けを短くカットしているって噂は本当だったのか」なんて醜い八つ当たり思考に走ったりもしたのだ。
だが、落ちた本当の理由は、力を入れる方向を間違っていたのだ。
センタースタンドの脚の部分が設置したとき、センタースタンドのピボットと脚の関係は、上の図の赤のラインのように、もう、かなり立った状態になっている。そこからセンタースタンドが掛かった状態までは、当然、円弧の動きをするのだから、もう、接地したらそこからは真上に車体が上がるのではなくて、ほとんど横に移動しているのだ。
もちろん、センタースタンドが接地した個所から、今度はその地点が支点となって、車体全体が弧を描きながら後ろへ移動するわけだが、力を入れるべきは、この弧を描く動きにそう方向なのである。
上の図の黄色い矢印の方向へ車体を導くように入力するのが一番効率が良い。
僕は軽いSRV250でいつも間違った(=無駄の多い)方向への入力をしていたのだ。本に書いてあった、「スタンドを踏みつけて体重を乗せ、アシストグリップを上に、車体を引き裂くかのように持ち上げる」という表現を、よく考えずにうのみにし、真上に車体を引っ張り上げようと力んでいたのだ。
それでは、重い試験車両が上がるはずもない。
さて、バイクを傾けるときにも、同じようなことが起きる。
バイクが本来倒れていく動きにシンクロした方向への入力が最も効率がよく、それに沿わない方向への入力は、どんなに力をいれたところで、あまり有効ではない。
では、バイクはどんな動きで傾いていくのか。
ここで出てくるのが「ロール軸」である。
これは、走っているバイクが傾いていくときに、動き続けているバイクを基準として観察したときにどのような動きをしていくか、で考える。
先ほどのロール、もう少しスピードを落として20km以下にし、テンポをワルツでなく、マーチにして、イチ、ニイ、イチ、ニイ、と左、右に連続で傾けて蛇行してみよう。
バイクは、車体全体が右に左に傾きながら、しかも前輪はひらひらと車体の外側を遠回りして動いていくのが感じられるはずだ。
もしも前後輪ともに接地点を支点として扇形にロールするのなら、前輪が外回りするような感覚は起きない。バイクのロールは、地面を回転軸として起きているのではなくて、地面よりも上をしかも斜めの回転軸にそって起きているのだ。
『バイカーズステーション誌』、ホンダOBの本多和朗氏、小澤源男氏によると、ホンダでは設計時にバイクが走行中に傾いていく動きをするときの回転軸を「仮想ロール軸」としている。
仮想ロール軸は、大まかには後輪の接地点と、ステアリングステムの下端とを結んだ線となる。
「ロール軸」という言葉バイクジャーナリズムで最初に使ったのは、『ライダースクラブ』だと言って間違いないと思う。1980年代だ。ライダースクラブの根本健氏によると、ロール軸は後輪の接地点からクランクシャフトのあたりを通って、フロントフォークと基本的には直交する。
この軸がロールの回転軸となるので、軸と上と下とでは反対向きに回っているように見える。
つまり、上の写真でシート側が進行方向に対して左(写真では手前)に傾くとき、フロントタイヤ側は右側(写真では奥)へと回転しながら遠ざかるような動きになる。
言葉や図で説明するとわかりにくいが、実際に直線路でスラロームしてみると、このロール軸が体感できるはずだ。
さて、さて、バイクを傾けるときにはこのロール軸に逆らわない、バイクが動きたがっている方向へと入力するのが最も効率がよい。
だが、実際にバイクの上でいろいろ力を入れていると、僕が限定解除試験で落ちたように、無理な方向へ力を入れたり、かえって動きを邪魔したりすることも起こりうる。
ここで実験だが、今度は直線路で、1秒間に2回くらいの速いテンポで左右に細かくロールしてみる。傾けるというよりも左右に揺するという感じだ。
これを、着座したままやってみる。
最初は20km/hで。
次に30km/hで。
どしっと座ったままカウンターステアを軽く充てると、くらくらくらくらとちゃんと反応する。しかし、おそらくちょっとだが車体がねじれるような、ちょっとグリップやフレームに変な負荷がかかっているような気がするはずだ。
そして、20kmと30kmを比べると、30kmの方がねじれる感じが少しだが強くなっている。
安全を確保し、これを、40km/h、50km/hでやると、その感覚は次第に顕著になってくる。
危険なのでくれぐれも強くしないこと。無理は絶対に禁物である。
V7の場合、60kmでこれをすると、明らかに車体が単なるロールでなく、ねじられて揺れるのがわかる。入力しすぎると危険な領域に行くので、絶対に無理しないこと。
この1秒2回ロールを、今度はステップの上に完全に立ち上がって、ステップの踏み込みのみで行う。
ステップを踏み込むというよりも、歩くというか、階段を下りる(上るのではない)ような感じで足を踏み替えていく感じだ。
すると、驚くくらい軽く、軽快に、マシンに左右にロールする。
しかも、カウンターステアを使ったときのようなねじれがなく、車体の状態もグリップの状態も安定している。
着座のままだと、ライダーごとロールしなければならなかったところを、ライダーが立ち、マシンだけをロールさせるようになったので、俄然動きが軽くなったのだ。
そのまま徐々に腰の位置を下げて着座すると、その瞬間、ロールが重くなる。
どかっと座ったまま、イン側のステップをぎゅうぎゅう踏んでも、バイクは傾かない。
このステップ立ちロールは、バイクが本来いかにロール方向に対して軽く動くかということが実感できる実験だ。
さらに、バイクのロール軸の存在を実感しやすい練習でもある。
この実験では、並列4気筒のバイクよりもモトグッツィやBMWのようなクランク縦置きのバイクの方がよりロールの軽さが実感できる。
事実、V7はGPZ1100に比べると信じられないくらい軽快に、いや軽すぎるくらいにロールする。
この感覚、この時の動きを、着座のときにも邪魔しないようにして倒し込んでいけばよいのである。
ただし、ここでも注意が必要なのだが、直進しながら蛇行するロールと、本格的にヨー運動を起こして旋回していくときのロールは、ライダーの動き、バイクの動きともに若干異なる。
また、バイクのロール軸は、路面状態、走行速度、エンジン回転数などでも変化する。
特に走行速度によっては変わってくるので、固定的に考えず、その都度、バイクが一番動きやすい軸を見つけ、それにそう形での入力を試行錯誤しながらだんだん体の中に蓄積して行き、適切なロール軸に沿っての入力がいつでもできるようになることが目標だ。
ちなみに、V7の直線ロール60kmで感じるロール軸はピンクのラインのようなものだった。
ロール軸がリヤタイヤの接地点より後ろに伸びてしまっているが、これだとリヤを外に振り出すようなコーナリングになってしまう。あまり極端だと、これは好ましくない。
速度を落とすと、ロール軸の接地点がリヤタイヤの接地点に近づいてくる感覚がある。
現実にはこのようなロール軸になることもあると、以前根本氏が書いていたが、これは縦置きでシャフトドライブという車体構成も影響しているだろう。
GPZ1100ではロール軸が後輪の接地点で地面に接する感覚がいつもあった。
さてV7の本当のロール軸はどうなっているのか?
これはまた、走り込んでつかんでいくしかないのだ。
ああ、こんなことが無性に楽しい。
まとめよう。
1 ステップの上に立って踏み込みだけで車体をロールさせてみると、思いのほか軽く動く。
2 その時の動きが本来のバイクのロールのポテンシャル。無理なく、うまく入力できれば、着座姿勢からもその軽さでリーンできるはず。
3 うまく入力するにはロール軸に逆らわない入力でバイクを倒していくこと。
4 ロール軸はおおまかには決まっているが、バイクごとに、また走行条件毎に変わる。愛車のロール軸をつかんでおきたい。
実験して、こんなことを考えた。
注意!*************************************
本ブログ管理人、執筆者の樹生和人は、バイクに関してまったくの素人であり、その説の正しさは何ら保障されていません。
読者のみなさんは、絶対にうのみにせず、もしも書いてあることを試すときにも、かならずご自分の状況下での有効性を考えたうえで、ご自分の安全判断の元に行い、絶対に無理をしないでください。
本ブログはこれを読んだ各ライダーの実際のライディングに関して一切の責任を負いません。
言うまでもありませんが、ライダーは、その運転において、自分の命を守るのみならず、周囲の人を巻き込まぬように安全に走る義務があります。命を守る運転を。
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takaです
返信削除深い内容ですね(^_^;)
ロール軸の話、良く解ります。
私の場合、ワインディング走行がひさしぶりの時など、『乗れていない』ことに気付いた時には、似た事を行って、感覚を確認するときがあります。
ロール軸に気付くと、不思議と体の使い方が、バラと合ってきます(笑)
『外側のタンクを押す』は、極端に意識はしてません。
上体をインに入れてリーンした時に、外側の膝が開いてなく、タンクに沿っていれば、程よく入力されるみたいなので。
極端ですが、外側のタンクを押すを意識しすぎると、半力で上体が外側になりやすく、リーンアウトっぽくなりがちなんです。私の場合。
体の使い方も、難しく、奥深いですね(^_^)
takaさん、こんにちは。
削除タンクを押すのを、シートに乗ったお尻を支点にして押し込むようにすると、こねるようになって、傾くけれど曲がりはじめがゆるいものになりますね。
ただ、タンクを押す方法では、フロント関係をねじらないので、カウンターステアばかりだった人が最初に試すにはいいかと思います。
もちろん、実際のリーンではいろんなことを複合的にやっているわけですが。
そうすると倒し込む時に一番力を使わないのは、直線時にライダーの体勢をイン側へずらしておいて、ブレーキングGで直進力を高めておき、倒し込みのポイントでブレーキを開放するとともに、ライダーが抜重してリーンしていく、「向き変え」が一番無理がないように思えます。
KEI Cさん、こんにちは、
返信削除私は、立っている状態のステップ荷重と、着座している状態のステップ荷重とを別のものとして分けて考えた方がわかりやすい(説明しやすい)のではないかと考えています。
このことは、また、時間があるときに、ハンドリングワークショップの続編で書きたいと思います。
着座状態で、完全両手離しのジャイアントスラローム。
たぶん、アクセル一定での切り返しをさらに極端にしたもの、
すべて下半身のホールドと重心移動だけでコントロールするものとなりますが、
これは、超広い下り坂があれば練習できますが、その場所を確保することが難しいですね。
20年以上昔、誰もいない長い急な山道の下りで、完全手放しのまま下まで降りてこようと思ったことがありましたが、できませんでした。(ギヤホールドのままリヤブレーキと下半身ホールドだけで下ってくる…というものです。)
今では危険なのでトライする気も起きませんが、どのバイクも完全に全速度域でニュートラルステアを維持できるわけではないので、ハンドルバー入力による「補正」もある程度はいいのではないかと思っています。
なかなか…、頭でイメージしたことを身体で実際にできるようになるということは、
どんな分野でも、一朝一夕にはいかないものですね…。
KEICさん、こんにちは。
返信削除逆ハンは車体を「こじる」ことになるので、できれば使わない方がいいと私は思っています。
でも無意識にやってしまうもので、ある程度ならそれもいいか…と。
状況によってハンドルが切れ込んだりするのを「補正」する操作は、どのみち必要になりますし。
逆ハンを意識して、絶対に無理がかからないようにできるようになれば、それはそれとしてひとつのテクニックだと思います。でもそれは相当に高度なものだと思うのです。
コース内で行うパイロンスラロームでタイムを上げていくためにはかなり有効かもしれませんね。競技としてなら、転倒リスクも管理の上で限界を目指しますから。
何事も、あまりすぐにできては面白くないのかもしれません。じっくり反復して体に染み込ませていくことが、上達の喜びのひとつかもしれませんね。
KEICさん、こんにちは。
返信削除なるほど、競技としてのパイロンスラローム(を含むライディング)にトライなさっているのですね。
公道には公道の厳しさが、競技には競技の厳しさがあると思います。
そして、楽しさも。
公道でも、コース上でも、楽しみながら、精進できればいいなと思っています。
KEICさん、こんにちは。
返信削除私、朝でも夜でもいつでもこのブログの挨拶をこんにちはとしているので、コメントくださる方は書きにくいですよね。自宅PCでしかブログを見ない、更新しないので、時差が大きく、挨拶もずれるので、こんにちはにしてます(^^;)でも、「おはよう」でも、「こんばんわ」でも、コメントくださる方の時間帯での気軽な言葉遣いをしていただけたらと思います。(^^)
さてさて、おすすめ4日間、タンデムですね。
記事として書きたいと思いますので、少しお待ちください。
レンタルバイク、タンデム、と。
KEICさんは北海道は初めてではないと。タンデムの方は北海道は初めてですか?
タンデムには慣れていらっしゃいますか?それによって、行程が変わってくると思います。
機種は、どんなものを想定されているでしょうか。
など、いろいろお聞きしたいこともありますが、まずは一般的なコースとして考えてみたいと思います。
もちろん、道内に住んでいるといっても、北海道のツーリング、ルート、ホテル、食事、温泉などについては、私なんかより詳しい方がたくさんいらっしゃいますので、あくまで素人個人の一参考例としてご覧いただきたいと思います。
では、記事で。早ければ今晩に上げられるのではないかと思います。
KEI Cさん、こんにちは。
返信削除奥様とタンデムツーリング、いいですね。
250スクーターなら動力性能は十分だと思うのですが、高速道路の連続クルージングを考えると、400ccの方がいいかもしれませんね。
で、私もタンデムほとんどしないのですが、インカムはとってもいいみたいですよ。
インカム、私持っていないし、体験もないのですが、でもタンデムツーリングならインカムはお勧めです。
KEICさん、こんにちは。
返信削除割と北海道は、郊外の信号が少なく。ワインディングも少なく、ただ走り続ける時間が長いので、
本州よりもインカムの登場機会が多くなると思います。どちらかというとタンデマ―のために、インカムはいいかなあと、思っています。
400と250ですが…、250ではできないという話ではないので、悩ましいところですが、
値段とボディサイズが許すなら、400の方が北海道ではいいように思います。
どちらも、私が「そう思う」というだけのことですが…。