いつも休憩するバスステーションに、先客のライダーが一人。
ここは、トイレがあって、ベンチがあって、休憩にはとてもいいところ。
朝早くにここで休憩するとは、旅慣れたできる人だろう。
でもここで、まだ人と会話する元気までは回復していない自分がいる。
そろっと通過した。
でも、朝から1時間以上走り続けている。そろそろ休憩しておきたいところ。
そこで、いつもは立ち寄らない、幾春別川の向こう岸にちょっと寄り道をした。
対岸、幾春別山手町の丘の上には、梅の林があって、ここで「第30回、みかさ梅まつり」が5月7日に行われていた。
2016/5/15 7:14 |
もと炭鉱で働く人々の住宅、「炭住」がたくさんあった山手町。今は梅を植林して、きれいな梅林に。
周囲に梅の甘い匂いが充満していた。
ヘルメットを脱いで、しばしその甘い匂いに酔う。
五十浩晃、「愛は風まかせ」「ペガサスの朝」などのヒット曲。僕は「ディープ・パープル」が好きだった。
彼もまた、北海道の出身。高校の教師をしていた父親の転勤とともに美唄、苫小牧、静内などで育ち、札幌の大学へ。やがてプロに。
彼は、今も札幌を拠点に、音楽活動を続けている。
甘い梅の香りを運ぶ、春の風。
今日はよく晴れているけど、風が強くなりそうだ。
2016/5/15 7:17 |
なぜだろう。
この里が、僕は好きなんだった。
どうしてかわからないけれど。
炭鉱が閉鎖されて、幾春別も人口がどんどん減って。
空知には、こんな町がたくさんある。
でも、なぜか、幾春別は、僕に特別な感慨を抱かせるのだった。
このまま、ずっと、今日はここで過ごそうか。
そんな思いがふとよぎる。
でも、行こう。今日は、走りに来たんだ。
再びヘルメットをかぶって走り出した。
2016/5/15 7:30 |
そこからは民家も畑も何もない山の中を芦別に向かって走り抜ける道となる。
札幌方面から富良野への近道、抜け道として使われ、大型バスも通る道だ。
まだ時間が早く、交通量も少ない。
ちょっと走ると、さっき幾春別のバス停で休んでいたライダーに追いついた。
ゆっくり走っていたが、カーブではしっかり開け、スムーズに加速していく。
孤独を愛し、走りを愛している走り方だ。
しばらく、距離をとって後ろを走ったが、そのライダーは短い直線でやや左により、ウィンカーをつけて僕に道を譲った。いつもなら僕がしていること。今日は、僕が譲られる。
拒絶したのは、僕の方。
追い越しざま、手を挙げて、挨拶を。
山の中を走る。
雪がまだところどころ残る山肌。
樹々は色とりどりの若芽に萌えて、山は華やかな彩り。
この時期の山を、「はるもみじ」と呼ぶ。
山の上の方に、野生の山桜が咲いていた。
ちょっとだけ停まって、ヘルメットもとらないまま、シャッターを切る。
2016/5/15 7:32 |
やがて、三段滝につく。
さっき幾春別でトイレ休憩をしなかったから、トイレのために立ち寄った。
2016/5/15 7:50 |
轟音を立てて流れる、三段滝。そのそばの斜面に、やぱり桜が咲いていた。
2016/5/15 7:51 |
この山では、今が満開。
短い命を精一杯に咲く。
2016/5/15 7:54 |
野生の桜は、どうして崖に生えていることが多いのだろう。
針葉樹も広葉樹も、混じった山肌。
色とりどりに、思い思いの春。
2016/5/15 7:57 |
エゾエンゴサク。
北海道の野草。
少しずつ、少しずつ、心のしこりが、緩められていくけれど。
沸き立つ解放感は来ない。
深呼吸と、伸びと、体操も少し。
また、ゆきかぜにまたがり、走りだす。
さあ、富良野へ、行こう。(つづく)
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