2015年9月7日

前愛機「GPZ1100」その後。

今日、仕事帰りにいつもお世話になっているバイクショップ「ズーム」さんに寄りました。
V7ゆきかぜ号のオイル交換の予約のためです。(今日は時間がありませんでした。)
そこで、前の愛車、カワサキGPZ1100の消息を聞いたのです。


写真は2013年5月に撮影したもの

GPZ1100は、1995年に新車で購入、2013年まで18年間、約12万キロを共にした、私の前のバイクです。

とても愛着のあるバイクだったのですが、2013年、別れを決断、今の愛車、ゆきかぜ号を買うと同時に、ズームさんに引き取ってもらったのでした。

車齢18年。12万km走行。
カウル等の外装は傷、ヒビ、割れ、多数。パーツは既にカワサキには在庫なし。
この状態では値段もつくはずもなく、ズームさんは売る宛もないまま、引き取ってくれたのです。
エンジンは一度もヘッドカバーさえ開けたことがないのに、好調。パワーもしっかりでていて、過去、オイルがにじんだことも一回もありません。

ただし、転倒は数知れず。しかし、どれも立ちごけや、スリップダウン系でフレームまでは行ってなく、手ばなしでも峠を下れるくらい車体バランスは優れていました。(もちろん、比喩です。)

GPZとのバイクライフは、前のブログ、「聖地巡礼―バイクライディングin北海道―」に約1400件の記事として残っています。

さて、今日、ズームさんを訪ねると、社長と総務・会計の奥様(ズームはこの夫婦お二人のお店です。)、そしてお客さんがひとりいて、お話をされていたのですが、僕を迎え入れてくれて、ゆきかぜのオイル交換の話などをしたあと、ふと、社長が言ったのでした。

「樹生さん、樹生さんのGPZ、是非買って走りたいという人が現れて、その方が買われました。」
私はおどろきました。
あの、外見ぼろぼろのGPZを。
ズームさんのお話によると、普通二輪免許をお持ちの、古くからのライダーの方が、しばらく乗っていなかったのだが久しぶりにバイクに復帰しようと、400ccのバイクをさがしたらしいのですが、どうも現在のデザインのバイクにはピンとこなかったようで、買うに至っていなかったらしいのです。

ところが、ズームさんの店先で眠っているGPZ1100を見つけて、これが欲しい、と。
ズームさんはこれは大型だから売れないと言ったらしいのですが、なんと、GPZに乗るために大型免許を取得されたとのこと。
是非欲しいというその方の熱意に、ズームさんもGPZの再整備を決意。
そしてズームさんは、カウルをすべて外して、ヒビや割れの部分をすべて溶接して直し、2年間の不動で傷んでいたキャブ(錆やカビが中にあったそうです。)などを完全オーバーホール。
タンク内に錆はなく、キャブを直したらエンジンは問題なくかかり、他の部分も問題ないことを確認し、その方への販売となりました。

写真は2013年5月に撮影したもの

もちろん、その方には、メーターは2万キロちょいだが、実は一周していて12万km走っていることや、2004年以来見てきた主治医としてこのGPZ1100のことは熟知していますので、さまざまなことも説明。
それでも、と、購入なさったそうです。
もちろん、ズームさんは売りっぱなしの店ではありませんから、その後の整備などには、信頼が持てます。それも、その方が購入することを決めた理由のひとつではないかと、私は勝手に想像しています。

聞けば、すでにその方は高校生時代からのバイク友達と、GPZ1100でツーリングへも行かれたとのこと。今年の冬のシーズンオフには、補修の傷跡だらけになっている外装の塗装も計画されているとのことでした。

そしてズームさんは、私に封筒を渡して言いました。
「GPZ、売れましたので、これはその代金の一部です。」

私は驚きました。
もともと値段などつかないGPZ、売ると決めてからも、キャブのオーバーホール、カウルその他の修復と、相当の時間と手間がかかっているはず。
なのに、お金など、受け取れません。それではズームさんが赤字になってしまう。

「いえ、ほんの少ししか、本当に少ししか入っていませんから。」
と、ズームさんは言いました。
「それに、かつての自分のバイクは、いろいろ変わっても分かると言いますし、樹生さんのバイクでしたから、買われたことを樹生さんに黙っていては悪いとも思っていたんです。連絡しようと思っていたのですが、今日、お見えになったので。」
「私たちも売れると思っていなかったのですが、買い手の方が現れて、お売りしたのですから、その分はお支払しないと。」

確かに私は、GPZを預けたときに、別に代金を受け取ってはいません。つまり、下取りとしてGPZを扱ったわけではないのです。しかし、引き取っていただいた時点で、GPZの私とズームさんを巡るやり取りは完了しているはずです。今、GPZが「商品」になったからといって、2年前「商品」でなかったGPZを出した私に、その「卸値」を払う必要は、ズームさんにはないのです。

それでも、売れたからには、代金を払う、というのが、ズームさんの姿勢です。

私は、その姿勢に打たれました。
お礼を言って領収書にサインし、そのお金をいただきました。

このお金は、「ゆきかぜ」のカスタムの料金の一部として、使うつもりです。

GPZ1100、2年前に僕の手を離れたバイクは、第2の人生を歩き始めていたのでした。
胸の熱くなる、9月の夕方でした。


10 件のコメント:

  1. いいお話ですね~
    まさに 不滅のGPZ。きっと来シーズンどこかで会えることでしょう。
    大きくて、長くて、重くて、強くて、優しくて。
    青なんだけど緑に光るときもある不思議なカラー。
    めずらしい左出しナサート管。
    力強く北の大地をふたたび走り出して欲しいものですね!

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    1. kaoriさん、ありがとうございます。
      また走ることになるとは、私も予想していませんでした。
      あのバキバキ割れカウルをすべて修繕したのかと思うと、ズームさんには頭が下がります。
      ナサート管はチタン管にサイレンサーは新しくしたばかりでしたから、そのまま続行だと思います。
      冬に色を変えるそうですが、来春は何色で走っているのでしょう。

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  2. 青のGPZ懐かしい~。左出しのマフラーで直ぐ樹生さんと
    判りましたね!この色のGPZってあまり見ないし、走っていたら
    気になります。
    バイク屋さん、いまどき珍しい律儀な人。2年前の話が蘇るなんて。

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    1. いちさん、ありがとうございます。
      GPZは今まで黒と赤を一台ずつ、札幌市で見かけたことがあります。
      どれも私のよりきれいでしたけど…。
      ズームさんは、ホントに仕事に誇りを持っている方です。信頼しています。

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  3. あのGPZが今も走っていると思うと、なんだか嬉しくなります。

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    1. 金田さん、ありがとうございます。
      第2の人生を歩み始めたGPZ、オーナーの方のバイクライフが、安全で豊かなものになるように
      祈らずにはいられません。
      あの低速トルクで、ゆっくりも速くも、自在に走って行くでしょう。
      うれしく、そして切ない気持ちです。

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  4. いいお店ですね。
    バイクへの愛情・・・ご本人にもユーザーにも・・・愛情があり、大切な『想い』がある事をしっかりと理解していらっしゃる。
    生涯付き合いたいバイク屋さんだ。

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    1. tkjさん、ありがとうございます。
      ズームさんは、本当にバイクとオーナーを大切にします。
      決してノーマル至上主義ではなく、しかし、カスタムをどんどん奨めてパーツを売ろうとするのでも決してなく。
      バイクの悪い所はいろいろ苦労しても直してくれ、オーナーが困ったときには助けてくれます。
      過剰なサービスや、おべっか、過剰な値引きによる販売確保はしませんが、
      結果的にはすごく安くなるし、何より安全、安心です。
      tkjさんがおっしゃるとおり、「愛情があり、大切な『想い』がある事をしっかりと理解していらっしゃる」のだと思います。
      本当に、札幌に住んで走り続ける限り、お世話になりたいバイク屋さんです。

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  5. いいお話を聞かせていただきました。
    これまでの樹生さんの投稿からも感じられてはいましたが、本当に誠実なショップさんなのですね。
    樹生さんと12万kmをともにされた大っきな老犬(でっかいピレネー犬って表現をされてましたよね)が
    新たなパートナーさんとどんな景色・世界を見ていくのか、とっても気になるところですね。
    ズームさんのお客様ならば、きっと幸せに過ごせると思います。

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    1. Hiroshi Mutoさん、ありがとうございます。
      ZOOMさん、本当に誠実に、オーナーと、バイクに向き合って、誇りある仕事をなさる方です。
      GPZくんを買った広島の「カワサキショップキティ」さんといい、ZOOMさんいい、バイク屋さんには
      本当に恵まれたバイクライフを送っていると思います。
      そして、どんなお店と付き合うかは、バイクライフにとってかなり大きなことでもあると感じています。
      この秋空の下、GPZが走っていると思うと、どこかうれしく、どこか切なく、複雑な気持ちになります。
      でも、もう僕のGPZではありません。買われた方のもの。その方と走って、その方との思い出を作って行きます。
      僕は、ゆきかぜ号と、この秋の旅をしみじみと、時に踊るような気持ちで、走って行きたいと思います。

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