2019年5月2日

風の色3 黄金の道

2019/4/29 9:06
昭和30年代生まれの人にとって、えりもと言えば、岡本いさみ作詞、吉田拓郎作曲の「えりも岬」がすぐに思い浮かぶだろう。森進一の歌唱で大ヒットしたこの歌は、メロディーもさることながら、「えりもの春は、何もない春です」という歌詞が、非常に印象的だった。

えりも町の市街地は、しっかりと整備され、えりも町には、いろんなものがある。
でも、あの歌のあのメロディー、あの心象、その中で、えりも町の春は、何もない春」というのが、旅人を迎える暖かい珈琲と、暖炉の火のイメージを、本当によく表していたと思う。

僕も今でも、襟裳岬と言えば、この歌が浮かぶ。
そして、襟裳岬には、春のうちに、来ておきたかった。

2019/4/29 9:11
襟裳の市街地を抜け、国道から道道34号にチェンジし、岬に向かう道を走ると、高い樹がなくなり、草原と、海と、時折漁村の風景が広がる。

気温は10~12℃くらい。朝から見れば、だいぶ上がった。
風が強い。襟裳はいつも強い風が吹いている。


2019/4/29 9:16
岬が近づくと、道は海沿いから丘の上へ、駆け上がる。
海沿いはあまりに断崖で走れないからだ。

2019/4/29 9:18
丘の上。
このうねる道の先、もう少しで岬だ。
丘の上の平原と、両側は海、太平洋。
それだけだ。
風が強い!
今日は西風だ。
まっすぐ走るためには、バイクが右に傾く。

襟裳岬はあまりに風が強くて、「風極の地」ともいわれることさえある。

もうすぐ岬だ。

2019/4/29 9:24
あんなに空いていた道だったのに、襟裳岬の展望台前の駐車場は車で一杯だった。
「風の館」は、岬に関するいろんなものが見られる情報館で、景観と自然保護に配慮して殆ど地下に作られている。
もう何度も訪れているので、今日はパス。
岬の灯台をかすめて、展望台へ。

2019/4/29 9:25
展望台から見下ろす海。
突端まで遊歩道が続いている。
今日はよく晴れた。
風が強く吹いている。
耳元で常に音がするくらいだ。


2019/4/29 9:25
岬の突端から海へ続く岩礁。
これは北海道を東西に分ける日高山脈の南端だ。
どこまでも続く青い海。
沖まで続く岩礁。

崖の上からこれを眺めると、この海の向こうまで、行きたくなってくる。
岬はいつも、旅人をいざない、
岬からの風景は、さらなる旅を思わせる。

ここから西は日高。
ここから東は十勝。
大地の分かれ目だ。

2019/4/29 9:25
えりもの漁港、そして北へと続く山脈。こちらは十勝方面。
今から、海沿いに、あの陸地の先を越えて、その向こうの十勝平野へと
走っていく。

駐車場に帰り、トイレに寄って、体操をして、
さて、出発だ。
強風に走り出す前に倒されないように、しっかり踏ん張りながら、
ゆきかぜのエンジンをかける。

ゆっくり、走り出した。


襟裳岬の少し北、山の上に、丸いドームを戴いた建物が立っている。
自衛隊、北部航空警戒管制団のレーダー基地だ。
牧草地の中の道からも、岬からも、よく見える。
これもまた襟裳岬の一つの風景だ。


海岸段丘の上に台地が広がり、そこから落ち込んで少し浜があり、そして太平洋へ。
このあたりの浜は百人浜と言われ、渚100選に選ばれているらしい。


2019/4/29 9:48
海岸段丘の下、この道を、ひたすら北上。
もう民家もない。

あんなに車がいたのに、走り出すと、また前後に車はなく、対向車も来ない。

青いそら。
海側に低い樹木。
これは、襟裳の人達が植えたものだ。
海を守るために、樹を植える。
この活動は有名になった。

なんて考えながら、流していると……、

2019/4/29 9:52
バビューン!
鮮やかに僕を抜いていった1台のバイク。
さっき岬で見た、ZRX1200DAEGだ!
ひょーぅ。

2019/4/29 9:52


あっという間に遠ざかる。
やっはー! いい旅を!!


百人浜を過ぎ、北上を続けると、やがて海岸段丘は終わり、
国道とも合流して、庶野の街へ。ここは桜が有名だ。
今日はまだ、咲いていなかった。
さて、庶野を過ぎると、景色は一変する。
いきなり日高の山塊が海へと落ち込む、断崖の続く難所にさしかかる。

黄金道路だ。

2019/4/29 9:59
この道は、難工事に次ぐ難工事で、まるで道路に黄金を敷き詰めるくらい金がかかってしまったというところから、そう名付けられた。
海と山とに挟まり、山にへばりついて、トンネルと堤防とで何とか走っていく、そういう道だが、海が荒れると、通行止めになる。
大波で道が完全に波をかぶることも、ざらなのだ。

完成してからもずっと、工事が続けられ、より通行止めにならない、安全な道へと、
トンネルの新設、覆道の整備、とにかく、巨額の予算が投じられた、そういう道なのである。

2019/4/29 9:59
展望台には、車と人が一杯だった。
僕も停まればいいものを、どうも苦手で、そのまま通過してしまう。
ここから難所を越えていく。
北陸の親不知子不知のようだ。

2019/4/29 10:08
途中、道の脇が広くなっているところで、小休止。
肩を回し、全身をほぐす。
海岸線に山が連なり、ずっと難所が続いていることが見える。

2019/4/29 10:08
同じ場所。
実は上の写真で見えていた覆道は今は立ち入り禁止。
新しい、右手にできたトンネルで山の腹の中を進む道になっている。
黄金道路には、長いトンネルが多い。
えりも黄金トンネルは4,941mで道内最長。
目黒トンネル1,876m、
新宝浜トンネル2,438m
タニイソトンネル2020m。

今、見えているのは、目黒トンネルだ。

2019/4/29 10:16
同じ場所から北側を見る。

2019/4/29 10:17
やはり覆道とトンネルが並んでいるが、トンネルが新道で、覆道は立ち入り禁止だ。
崖の岩肌の工事跡。
巨大な山塊、岩塊に道路を通そうと、人がいろいろと苦労した「爪跡」だ。

2019/4/29 10:28
昔はトンネルの中も路面が悪かったり、地下水が雨のように落ちていたりしたものだが、
今ではどのトンネルも、路面良好。

走りやすくなった。

やがて、音調津(おしらべつ)を過ぎると、そろそろ難所も終わりが近づいてきていることを実感する。
広尾の街、港が遠くに見えてくるからだ。


2019/4/29 10:35
フンベの滝にやってきた。
岩盤から地下水が直接噴き出して滝になっている。

2019/4/29 10:35
夏の暑い日には、この水しぶきで涼を取る人も多いのだとか。

僕等は十勝平野に入っていく。
(つづく)

2 件のコメント:

  1. 樹生さん、こんばんは。
    風の色、ずいぶん遠くまで走りに行ったと思いました。
    朝早く起きて、遠くまで走るのは自分には難しく、ちょっとうらやましいです。

    えりも岬までの国道、235号と336号は、追い越し禁止が長く、集落が点在して走るのが難しい印象がありました。
    JRが不通になってからは、特に強く感じるようになりましたが、樹生さんはどうだったでしょうか?

    えりも岬に百人浜。
    しばらくぶりに自分も訪れたくなりました。

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    1. 緒崎さん、コメントありがとうございます。
      久しぶりの遠出でした。
      結果から見ても、その日しか行けなかった走りになりました。

      昔から、襟裳への道は、静内から向こうは一本道で、イエローラインで、
      地元の車も速いのもいれば、信じられないくらい遅いのもいて、
      時間のかかる、つらいものでした。
      だからこそ、遠くへ行くんだという、そんな気持ちも、催されるものだったかもしれません。

      今回は、もともとゆっくり走るつもりだったので、
      前をふさがれてイライラということはありませんでした。
      むしろ、道を譲っては追い越されることを繰り返しての走行になりました。

      だったら、クルーザーでいいんじゃないか?
      ……ふと、そんなことも浮かんできた、そんなツーリングとなりました。

      次はワインディングのあるコース設定にしてみようと思います。

      時期車種を考えるのは、私の場合はまだ早い感じで、
      少なくとも60までは乗ろうかと考えています。
      体力が落ちてきたとき、または仕事のペースが変わった時、
      どんな走りをしたいと思っているか…。
      それによって、変わってくるかと思いました。

      今回襟裳へ行って、久しぶりに根室へも行きたくなりましたが…。
      どうも今のところ、無理っぽいです。

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