そろそろ帰路につかなければ、今日は、夕飯までには帰ると言っている。
もういっこだけ、行ったことのない、十勝平野の展望台に行ってみよう。
清水円山展望台だ。
2019/4/29 13:22 |
入り口が少しわかりにくいのと、直下から展望台までの約1kmはダートだ。
これが、玉砂利が敷いてあって、ベアリングのようでゆきかぜには怖い。
エンジンガードも装着していない僕のゆきかぜ号は、転倒は許されない。
それほど走りにくいダートでもないのだが、玉砂利は緊張する。
ガチガチに身体が固まり、緊張して登ってきた。
2019/4/29 13:22 |
もう一台の先客は、BMWのR1200GS。
堂々たる体躯。地上の王たる威厳。
うーむ。無敵。
展望台のある一段高いところへ階段を上がる。
展望台の看板の向こうのベンチに、R1200GSのライダーが
あお向けで、頭の後ろに腕を組み、昼寝をしていた。
展望台から北東の方角を見る。いま、登ってきた道が見える。
南東方向。どこまでも、広い。
もう少し南に振る。
右の雪の残る日高山脈の山。
その裾野、向こうにぽんと、高くなっているのは、新嵐山、芽室スキー場のところだろうか。
十勝に住んでいた頃、小学生だった息子とよくスキーに来ていたところだ。
2019/4/29 13:27 |
広い。
これが十勝だ、と改めて思う。
2019/4/29 13:27 |
ゆきかぜは、小さいが、風景に負けていない。
周囲を威圧することはないが、自分の存在を、静かに主張している。
こういう個のあり方は、なかなかいいものだと思う。
さて、ゆっくりしたいところだが、帰り道を急がねばならない。
出発しよう。
帰り、下りのダートは、さらに怖い。
慎重になり過ぎて、ビビってしまうと、かえって危険なのだが、
ゆっくり下った。
あんまり緊張していたので、ダート部分の写真が一枚もない。
いやいや、安全第一だ。
2019/4/29 13:34 |
2019/4/29 13:36 |
ここは漫画『銀の匙』(荒川弘)の実写映画が製作された時に、ロケ地に使われた所だそうだ。
なるほど、でも、「大蝦夷高校」(のモデルの帯広農業高校)からは、ずっと離れてつけどね。イメージはばっちりだ。
さあ、あとは日勝峠を越えて、帰っていこう。
2019/4/29 13:58 |
が、途中でトイレと、飲み物の休憩だ。
身体をほぐし、峠越えに向けて、寒くないかをチェック。
まだ20℃以上ある。さっき脱いだオーバーズボンとダウンベストは、まだ着ないでおく。
じゃあ、登ろうか。
2019/4/29 14:15 |
2019/4/29 14:21 |
トンネルで峠を越えたら、
2019/4/29 14:25 |
日高側は十勝側のようにストンと落ちていない。
深い山を、徐々に下っていく。
2019/4/29 14:26 |
下るにつれて、雪が少なくなり、樹が多くなる。
路面はドライ。
2019/4/29 14:34 |
徐々に下ると言っても、勾配は緩くはない。
ずっと、下りが続く。
2019/4/29 14:35 |
トンネルの中は10℃だったが。
日勝峠を降り、日高の街へ。
2019/4/29 15:00 |
日高で注いでから、326.3km走行。
注いだのは、ハイオクが12.30ℓ
燃費は26.53km/ℓ
やはり道東に来ると燃費が良くなる。
セイコーマートで、水分と、栄養を。
2019/4/29 15:12 |
ゆきかぜに、ちょっと違和感を感じた。
2019/4/29 15:13 |
何かついてるか?
近づいて見る。
やや、これは。
2019/4/29 15:16 |
タイヤのトレッドが斜めにスパッと切れている。
まだタイヤに何か残っているか?
と見たが、何もない。だが、結構傷は深い。そして見事に切れている。
めくってみたり、濡らしてみたりしてみたが、カーカスには傷が及んでいないようだ。
空気もれはない。
しかし、これ、大丈夫なのか。
2019/4/29 15:16 |
ちょっと車体を前後してみたり、タイヤに上から荷重をかけてみたりしたが、
やはり空気漏れはないようだ。
だが、これで走行して、いきなりどかんとパンクしたり、
カーカスまで傷が及んでいて、バーストしたりしたら、大事故だ。
さあ、どうする…。
考えた結果、
「そろそろと、走って帰ってみよう。
もしだめだったら、妻に電話して車で迎えに来てもらうしかない。」
と、なった。
旅の最後にこのハプニング。
旅の感傷気分(センチメンタリズム)もふっとぶ。
では、行くか、ゆきかぜ。
そっと、強いトラクションをかけないように、アクセルは半開以下。
特に右カーブはできるだけゆっくり、タイヤを傾けないように走る。
タイヤ温度を上げ過ぎないようにし、急加速、急ブレーキは禁物だ。
速度が高いのもだめだ。
慎重に、慎重に。
後ろから車が来たら、抜いてもらう。
走行中にバーストして、転倒、後続車に轢かれる…というのが、最悪のシナリオだ。
少し走っては停まってタイヤ状態をチェックする。
大丈夫のようだ。
それでも、やはり慎重に。
2019/4/29 16:20 |
休憩を入れ、とにかく慎重に。
無事に帰ることが最大の目標だ。
長い長い90分間。
ゆっくりゆっくり走り続けて…
2019/4/29 16:43 |
前方に広がるのは、石狩平野だ。
なんとかここまで、帰ってきた。
2019/4/29 16:47 |
タイヤをチェック。
まだ全然抜けていない。タイヤ表面も日高から変化がないように見える。
トイレに寄り、水分を取り、体操をして。
ここから札幌市街へ向けて、道が混んでくると、
トラクションやブレーキを滑らかに、最小限にすることが難しくなってくる。
2019/4/29 16:56 |
車列の動きを予測し、後続車に無駄にブレーキを踏ませず、いらいらさせないように、
なめらかに走るのだ。
気をつけていこう。
安全第一で。
脇道を使える時は使って。
2019/4/29 17:08 |
太陽もだいぶ西に傾いてきた。
家も少しずつ近づいてくる。
こういう時こそ、リズムを大切にし、休憩を計画的にしっかりとることが大切だ。
2019/4/29 17:27 |
なるべく動きの鋭くない車が先頭になる車列に入り、かつ、車間を取って、その車間を緩衝材として使いながら、なめらかに走るように心がける。
走っていての感覚では、特に変化は感じられない。
変なバイブレーションもないし、腰砕けの感じもしない。
空気は抜けていないようだ。
それでも、時折停まってはチェックを繰り返す。
2019/4/29 18:00 |
6時になった。
太陽がだいぶ低くなった。
一日が終わろうとしている。
我が家も近い。
もう少し、最後まで、慎重に。
日高から後は、とにかく安全にと、そっちばかり考えていた。
旅の情緒も何もない。
無事に、生きて、怪我もせずに、帰るのだと、
誰も事故に巻き込まずに、帰るのだと、
一生懸命で、
他に余裕がなかった。
ああ、でも、そういうのが、
本来の旅の、心持ちなのかもしれない。
最後まで、肩は持った。
腰も大丈夫だった。
左手も、攣ることもなかった。
お尻も痛くならずに済んだ。
今日の走行、594km。
経過時間、約14時間半。
「ただいま。」
ウェアの中で汗だくの僕がいた。
樹生さん、無事帰還ホッとしました。
返信削除そしてお疲れ様でした。
私は臆病なので、
バイクで出かける前は常に
生きて帰るイメージをして出かけます。
走りだしてしまうとすぐ
ライディングに夢中になり、
そうした気持ちは、
どこかへ行ってしまいますが
それでも心の片隅に
おいて置ければと思っています。
我々の年代?には14時間半の
日帰りはかなりの負担かと……。
余計なお世話かもしれませんし、
そうした時間もなかなか捻出できないとは
推察されますが、
ゆっくり風呂につかり
たっぷり睡眠をとって
旅の疲れを癒してくださいね。
迷走さん、こんにちは。
削除ありがとうございます。
私も、毎回、生きて帰るぞ、と心に決めて、出発しています。
あまり走りに出られない分、一気に走ることも多かったのですが、
今回、さすがに「寄る年波」を実感しました。(^^;)
この連休はまた、仕事があって、この日しか走れなかったのですが、
それでも、いつもよりは少し休めた感じです。
お心遣い、ありがとうございます。
お疲れ様でした。
返信削除そして、ご無事のご帰宅、何よりでした。
>>旅のセンチメンタリズムもふっとぶ
トラブルがタイヤだけに、ご心情お察しします(苦笑)
僕も似たようなトラブルの際に、普段のツーリングでは感じないような全身の筋肉痛に帰宅後襲われたのを覚えています。
バイクに負荷をかけないように、いつも以上に力を抜いて乗っていたのに相当緊張してたんだなぁ
力を抜いてたつもりなのに、緊張で固くなっていたのかなぁ と反省?しましたっけ。
長く乗ってると、こういうこともありますね。
(序)に入れたコメントに「ご安心を」と返信いただいたこともあって、樹生さんのトラブルをよそに、今回もゆきかぜ号の乗り味に思いをはせながら、北の風景を楽しませていただきました。
Hiroshi Mutoさん、こんにちは。
返信削除『奥の細道』は日本で一番有名な傑作旅文学だと思うんですが、
あれは事実そのままでなく、いろいろ脚色されているそうです。
私のツーリングレポートも、事実に基づいてはいますが、
書いているうちに浮かんでくることもあって、
すべてが旅の途中の感慨ではないという側面もあります。
今回のタイヤトラブル、それまでの旅の気分とは全く違うもので、
この部分をカットすることも考えたのですが、
「いや、それも、旅か」と思って、そのまま書くことにしました。
一つの気分だけで走り切れるものではない。
そういうのも、バイク旅のあり方だと思うので。
無事帰れて、よかったです。