2015年5月5日

花と峠と湖と。(1)羊蹄山、洞爺湖

洞爺湖畔で。

この連休は、出勤しての仕事がない。
数年ぶりのまともな休みだ。
頸椎の痛みも徐々に薄れてきて、天気も連休前半はいいとなれば、これはバイクに乗りたくなる。

5月2日。4月25日以来、再びゆきかぜを引き出して、走ることにした。
(長い記事です。)

前回の走り以降、ゆきかぜは通勤で2回走っている。
給油がまだなので、早朝出発はできない。
近所のいつも使うガソリンスタンドが開くのが7時。
いつもどおりに5時に起き、6時に朝食にして、7時に家を出た。

今日の予報は晴れ。最高気温は21度。
防寒の肌着にシャツ、薄手のウィンドブレーカーの上から革ジャンを羽織る。
下は防寒タイツの上からクシタニカントリージーンズライド。
それでもの防寒対策にタンクバッグに雨合羽を入れる。

今日も無理はきかない。
明日(5月3日)、妻とデートドライブの予定があって、しかも出発は午前3時だ。
今日の疲れを明日に残すわけにはいかないので、頻繁に疲れをチェックし、筋肉の凝りや眼精疲労に気をつけながら走ることにする。若い頃には考えもしなかったことだ。
齢をとりながら、走り続けてきているということかもしれない。

7:52 札幌市南区簾舞
いつものルートでいつもの場所に来た。
小屋の横の樹は花をつけている。
手前の田んぼは水を張る前。奥の山は、芽生えの早い樹と遅い樹の差が、景色を独特なものにしている。
腕と腰に違和感がある。
革ジャンを着ると姿勢が変わるせいか、毎回最初だけ腰に違和感がくる。
一日走っているうちに忘れるのだが、これが腰痛に変わってしまったら走ることが困難になってしまう。
特に用心して、体を伸ばす。腕の違和感は腕そのものが痛むのではなく、頸椎ヘルニアによるものだ。
これももし痛みが増すようなら、引き返して安静だ。
今のところ、大丈夫そうだ。
ゆっくり体操をして、肩を回し、ストレッチをしてから出発する。

7:57 札幌市南区八剣山付近
しばらく行くと、八剣山のトンネルを越え、道の右手に山桜の樹が一本。
これは、去年も訪れた桜の樹だ。
同じ樹でも、咲き方は毎年違う。
ここでも休憩。
中山峠は一気に越えるつもりだから、ここでリズムを作るために少し調整する。

中山峠は1週間ぶりだったが、今日の気温は前回よりも高い気がした。
峠の道の駅も通過して、そのまま下ってきた。

8:36 喜茂別町 国道230号沿い
峠を下りたところで、大きめのコブシの樹を見つけた。
このあたりではコブシの樹が多い。
野生の樹としては、桜よりもずっと多いように思う。
春を告げる樹は、山桜と辛夷なのだ。
陽を浴びて白く輝いていた。

8:52 喜茂別町 国道276号
国道230を行き、真狩方向へ行くために国道276号へチェンジする。
すぐに羊蹄山を正面に見る場所に行きつく。
いつも写真を撮ってしまう僕の定番なのだが、いつも「おお」と思ってしまうのだ。
飽きるということがない。ちなみに先週の写真が下。
先週(4月25日)の同じ場所。
一週間で土手の雪は消え、木々の梢は緑に色づき始め、羊蹄山の雪渓もだいぶ姿を変えている。
春は、一日も歩みを止めない。

腰の違和感は薄まりつつあった。
腕の違和感はまだあまり変わらない。
悪くもなっていないが、よくもなっていない。
直接揉まず、肩を回して柔軟体操を。
陽射しが暖かい。

8:59 真狩村 道道97号線
国道276号を西へ。京極町へ入る前に国道を逸れ、道道97号線に入って、羊蹄山の麓を南へと回り込む。
畑はもう、作付を待っている。
空は抜けるように青かった。

真狩村の中心部を通って、道の駅でトイレ休憩をした。
まだ朝9時半前、客は少なく、スタッフの人たちは今日のイベントの準備に追われていた。

ここから道道97号を南へ下って行く。
洞爺湖方面を目指して行こう。

9:27 真狩村 道道97号線
道は丘を登り、高台を走って谷へと下り、また丘に登ることを繰り返す。
いくつめかの丘を駆けのぼったら、畑と森の向こうにマッカリヌプリ(羊蹄山)が見えていた。
この畑は、何が育つのだろう。
たぶんここはもう、種の植え付けが終わっている。
土の匂いがとてもいい気持ちだ。


9:37 豊浦町 道道97号側の農道から
交通量の極端に少ない農道を使って、自分のライディングのチェックと、ゆきかぜの走行チェックをする。
身体も固く、この冬に腹も出てしまった。本調子にはほど遠い。
それでも走ることでほぐされていく。
ゆっくり、安全マージンを大きくとって、絶対に無理はせず。

ゆきかぜの立ちが若干強く、車体の傾きと旋回力の絶妙の心地よさが感じられない。
これはタイヤの磨耗のせいだ。
真ん中が減り、変形したタイヤはハンドリングバランスを崩してしまう。
8500km近くを走り、リヤタイヤはもうスリップサインが出ていて、真ん中の偏平減りとそれ以外の所とに微妙に段差というか、「境目」のようなものができていて、これが自然なハンドリングを妨げる。

走らせればちゃんと走るのだが、きちんとバランスがとれている時のあの気持ちよさを知っているために、どうしても気になってしまう。
9:42 豊浦町 先程の農道を道道97から見上げる。農道なのにループ橋。

そして前回のオイル交換が3300km、そろそろオイル交換時期が来ている。
次期タイヤは前後セットでもう注文してある。
5月中にオイルとタイヤの交換を、いつもお世話になっている札幌の「ズーム」さんにお願いしよう。

深いバンク角になってしまえば、タイヤのプロファイルもあまり変わっていないので、安定した旋回の気持ちよさと安心感が得られる。
しかし、切り返しには若干の重さが出ている。
それは、僕の入力方法が悪いのかもしれない。

いろいろ試しながら走っているうちに楽しくなってきて、腰のことや腕のことは忘れていた。


10:25 洞爺湖 「水の駅」近辺
洞爺湖についた。

洞爺湖は僕の好きな湖。
大きなカルデラがそのまま湖になり、中島がいくつか浮いている。
近くには噴火の記憶も新しい有珠山、そして昭和新山。
火山の里、湖の里、そして温泉の里。
洞爺湖畔は独特の世界だ。

この湖はなぜか、いつ訪ねても、いつも明るく、やさしい感じがする。
どこか暗く、厳しい支笏湖とは対照的だ。

今日は湖を時計と反対回りで北から一周してみよう。

10:33 道道578 洞爺湖西岸湖畔の狭い道。
洞爺湖の西半分は、道幅が狭い。ほぼ1車線の区間が長く続いたりする。
でもそれが、湖の風景と、とてもよく似合ってるように思う。
好きな道だ。

いつも、ゆっくり走る。

10:47 洞爺湖西岸湖畔の狭い道。
湖畔にはたくさんの樹が植えられ、元々あった樹とまじりあっている。
たぶんここは植えられた樹と、勝手に生えた樹とがまじっているところ。
春の訪れもまた、一本ずつ、違った彩り。
こうした雑多な感じが好きなのは、子供のころからだ。

桜並木には、人の思いと自然の力というか、恵みというか、そうしたものが重なって、感情を持って行かれるような思いをする。
雑多な林には、何かまた別の、人と自然とのあり方を感じるのだろうか、どこかほっとする。

11:09 洞爺湖西岸湖畔の狭い道。
湖畔の道と国道とが出会うところ。
今日は洞爺湖温泉は桜が満開。この道にも、少しの人が訪れて、桜を観たり、湖を見たりして散策していた。

自転車に乗った人が写真を撮っている僕を追い越し、僕はまた彼をゆきかぜで追い越し、また僕が写真を撮っていると彼が自転車で追い越し…を、3回くらい繰り返した。

3回目には、お互いおかしくて、笑いながら挨拶した。

春は、そういう季節でもある。

11:39 洞爺湖東側湖畔 道道132号

南側、洞爺湖温泉街には、大きなホテルがたくさんある。
その賑やかな温泉街を通過、東側の道、道道132号線を北上していく。

こちら側は往復2車線。
木々は年輪を重ね、道は深い緑の中を行くことになる。
今日はまだ、その葉があまり繁っていない。

一気に走って、ネイパル洞爺の跡地まで来た。

11:39 洞爺湖東側湖畔 道道132号
ゆきかぜを停めて、さっきコンビニで買ったおにぎりと缶珈琲を。

暖かい。
長閑なお昼時。
ゆっくり食べた。

11:40 洞爺湖東側湖畔 道道132号
足元に小さな青い花が咲いていた。

11:39 洞爺湖東側湖畔 道道132号
そしてゆきかぜの足元には、芝生の中に桜の花びらがひらりと落ちてきた。
ここの桜の並木の花時には、少し早かったみたいだ。
以前に訪れた時の、あの桜はいまだに忘れられない。

ネイパル洞爺の建物は取り壊されて、今は立ち入り禁止になっていた。
桜の並木も、立ち入り禁止だ。
立ち入り禁止の手前にゆきかぜを停め、おにぎりを食べていると、一台の車が止まり、御夫婦が下りてきた。

「気持ちいいですね」と、声を掛けられる。
「そうですね。」僕が答える。
二人は、桜の方ではなく、湖の方へ歩いて行った。

11:44 洞爺湖畔 ネイパル洞爺跡。
おだやかな湖。
暖かな日差し。

同刻、同所
水面には一組の水鳥が、静かに湖面を進んでいた。
ご夫婦の話し声が、暖かな風に乗って、運ばれていった。

ずっとここにいたいような気がした。

11:51 洞爺湖東側湖畔 道道132号
でも、僕にはそれはできない。
ずっと同じ場所にいることは、僕はできない男なのだ。
昔から、今まで、ずっとそうだった。
きっと何かが欠けている。大事な何かが。
僕はいつも、「移動」したくなる。
次の場所へ。
「移動」こそが僕の居場所であるかのように。

さあ、出発しよう。
ゆきかぜ。
もう半周して、洞爺湖の南側から外輪山の外へ出よう。(つづく)

2 件のコメント:

  1. 喜茂別の直線区間好きですね!山と道のレイアウトが絶妙です。
    洞爺は優しく、支笏は厳しい。近くにこんな原始の姿を見ることが
    できるのは幸せなことですね。
    この季節のライディングは気持ちイイですね~。
    写真からも爽快さが伝わってきます。いつもながらですがね(笑)

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    1. いちさん、こんにちは。
      私、28年前にも同じところで写真を撮っているんです。
      なんか、進歩ないというか…。
      今日、5月5日も朝だけ雨でしたが、日中はよく晴れてバイク日和でしたね。
      私は既に自宅でデスクワーク体制に入っています。うう。
      きっと北海道中で、今日もライダーたちの「気持ちいい!」が聞こえたことでしょう。
      花の春、真っ盛りですね。

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