2015年5月6日

花と峠と湖と。(2)オロフレ峠


洞爺湖に別れを告げ、南東の端から外輪山の外へ。
国道453号から、すぐに道道519号線へ入る。
そういえば、洞爺湖に来たのに、温泉街の写真も、有珠山や昭和新山の写真も撮っていなかった。

道端にゆきかぜを停め、畑越しにごつい剥げ頭を出している昭和新山と、その向こうに高く霞んでいる有珠山を写真に収めた。


12:07 伊達市 道道519号
定期的に噴火を繰り返す、有珠山。
この地に住むということは、その火山噴火と付き合っていくということだ。
前回2000年の有珠山噴火でも新たな噴火口ができ、「わかさいも」工場が埋まったり、温泉街全体火山灰に覆われたり、大変な被害が出た。しかし、死者ゼロ。常に火山や火山の被害と向き合い、防災が文化にまでなっていたこの地区では、ひとりの被害者も出さずに済んだのだった。
その経験はその後の震災マップの全国への普及などに大いに役立ち、世界中からも着目されることになった。

日本は3つのプレートのぶつかる地点にある島々からなる国。
火山活動が盛んであり、地震は宿命だ。活断層も多い。
火山は、恐ろしい災害ももたらすが、温泉など恵みももたらす。
地震を押さえ込むことはできないが、できるだけ賢く、地震の被害を少なくするような暮らしや文明のあり方を、日本は進めていくべきだろう。

12:15 伊達市 道道922号。
国道453号線も快走できる道なのだが、その脇道、道道922号線は交通量もほとんどなく、道を独り占めしているような気分になる。
長閑な田園地帯をたおやかに駆け抜けていくこの路線は、バイクにはおすすめの道だ。
道端に、桜の樹とコブシの樹が等間隔に並んで花をつけていた。

同刻 同所
ゆきかぜのこの白・赤のツートンは2013年モデルだけの配色。
妻からは「ポケモンボールみたいでかわいくていい。」と言われている。
やれやれ、ポケモンだってさ、レディ。
でも君は、花が似合うね。

さあ、道を行こう、天気もいいし、首の調子も悪くないので、オロフレ峠に行ってみることにした。
久保内というところから国道に出ずに右に曲がって峠を目指す。

道を折れると、すぐに登りになった。
あとは坂が緩くなったりきつくなったりするが、標高930mの峠まで、ひたすら登るだけだ。

リズムに乗って快走、と行きたかったが、たまたま前に遅い4輪がいた。
センターラインの黄色が続くところでは、ラインを割って追い越すことは「原則」しない。
また、下品な追い越しや追い越されたドライバーに不快な思いをさせるようなことは「極力」しない。

峠の前半は見通しのあまり良くない、森の中のワインディングが続く。
バイクがファミリーカーを煽るのもよくない。
車間を開けて、追随する。
こんなとき、僕の作戦は、2つに一つだ。
のんびり後をついて走り、白線で安全な区間が来たら抜く。来なければあきらめる。
これが一つ。
もうひとつは、「停車」だ。停まってしまって休憩し、相手を先に行かせ、だいぶ経ってから自分のペースで走る。
こっちの方が僕は好みだ。ただ、この作戦の弱点は、そろそろ車間が開いてもういいかと思った時に別の遅い車が行ってしまうことだ。とほほ。もしそうなったら自分おろかさに笑っておとなしく行くしかない。

…で、今回は、停車作戦は使わない。なんだか止まりたくなかった。のんびりついて行く。
おいしそうなカーブが次々に消化されていく。ああ、もったいない…。と少しじりじりし始めている自分に気付いた。

おや、気持ちが戻ってきている。
走っているうちに、気持ちのリハビリもしてしまっているのか。

森の中の低速セクションが終わると、道は白樺が主体の見晴らしのいい尾根道へ出る。
遅いファミリーカーを挨拶をして抜かせてもらって、高速セッションを快走する。
でも、峠で高さが上がって来てるので、寒いのだ。ああ、情けない。身体が固くなる。

ゆきかぜの50psは解放しきってもたいした速度は出ないので、登りの高速コーナーならどこかへ吹っ飛んでしまうこともない。
オロフレのこちら側は路面がきれいなので、剛性の低いフレームがよれ出してうねうね波打つこともかなりふせげる。
上りだからブレーキの力不足もかなり軽減され、奥まで突っ込める。
タイヤ磨耗による直進付近のハンドリングの劣化は、ラインを読み切って一気に深いバンクまで持ち込むようにすれば、旋回力は素直に感じられ、安心してコーナリングできる。
(それでもあの感動的な過渡特性は失われている……。)
V7のコーナリングは、深いバンク角からでも身体の体重の預け方で旋回性を調整できる。
だから、通常思っているよりも高い速度でコーナーに進入しても、後からラインを修正してクリアすることが、ある程度のペースまでならできてしまう。(本当に限界域では非常に難しい。)
これは、一般的にモドグッチやシャフトドライブのハンドリングの癖と考えられているものとは違う。
モトグッチのスモールブロックエンジンを積んだ車体は、限界の8割くらいまでならライン修正の自由度はとても大きいのだ。

だからといって、進入速度を上げて行けばいいというものでもないし、リスクに対してマージンを削っていく走り方は、もう僕にはできない。社会的にも許されない。

頭を冷やして、ゆっくり上る。

12:42 オロフレ峠
峠の一番高い所のちょっと手前、トンネルが開通する前の旧道との分岐点に着いた。
旧道を行けば、峠の一番高い所で展望台があるのだが、雪が残っていて、今日は行けなかった。

見晴らしがよく、天気も良く、気持ちいい空間だ。



山々の連なりの向こうに、羊蹄山が頭を出している。右側に頭を出しているのはニセコアンヌプリだろうか。



別の方向を見ると、今度は山の重なりの向こう、本当に霞んで薄く、洞爺湖が見えている。



そこから峠道はトンネルに向かう新道になる。
旧道は右手に折れて山を登って行くが、旧道は直進して山裾を回り込んでいく。
ちょっと北側に入ると、道の脇には雪がまだまだたくさん残っていた。


オロフレトンネルの手前に広めの駐車場がある。
山登りから返って来たところか、男性が一人ワンボックスの側で装備をふるっていた。


トンネル左手の山は、これがたぶんオロフレ山だと思う。
この峠は、きりが多いのでも有名な峠だ。
今日みたいに晴れ渡るのは珍しい。

12:51 オロフレ峠
オロフレトンネルを出たところだ。
少し下って安全なところでUターンして来たので、ゆきかぜは今来た方向を向いている。
山肌を左に斜めに登って行く道は、トンネル開通前のオロフレ峠の道。
初めて通ったのは25歳の時。霧で真っ白で、何も見えなかった。

さて、もう一度トンネルを越え、さっきの駐車場で再びUターンして峠を下って行こう。


13:00 オロフレ峠
少し下って、登別方向を見はるかす。
こちらも広い森が続く。
すっかり春の色だ。今からここを下って行く。

13:01 オロフレ峠
ふとゆきかぜを見ると、とても逞しく見えた。
そう、かわいい色遣いや、威嚇しない形はしていても、こいつはナナハン。
街中ではシフトダウンを必要とせず、右手のひと開けで車群を置き去りにし、峠では右手の開け具合に俊敏に反応してフットワークを変える。


13:12 オロフレ峠 登別カルルス温泉付近
あっという間に峠を下ってきた。
後ろの山を越えてきたのだと思うと、すごいなあ、バイクは、と思う。
昔は自転車少年だったので、前方に山が迫ると、あれを登るのか…、と、ため息が出たものだった。
バイクになっても峠を越えることを、ただ走ることと同じようには感じられないみたいだ。

さらに少し下ると、登別温泉郷が見えた。

13:21 登別温泉
全国的に有名な温泉だ。
でも、今日は通過。
13:25 登別温泉街
温泉街の中の老舗ホテル、その前の小川と桜等の植込み。
和風の佇まいを、建物でも、周りの植栽でも演出していた。
北海道の中で、ここだけ、本州、いや「内地」みたいだった。

ゆっくり温泉街を通過し、桜の並木道になっている道道2号線を、海沿いの国道へ向かって下って行く。
片側2車線の広い道になり、両側には店が。

13:34 登別温泉の入り口付近 道道2号線

赤鬼がお出迎え、お見送り。青鬼もいた。

日本的洗練の仕方や、割り切ったB級的しゃれの利かせ方が、何かずれている気がしないでもないが……まあ、いいじゃないか。
ここの温泉は、それはいい温泉らしいから。

さあ、もう午後2時になろうとしている。
早く帰ろう。
海岸沿いを苫小牧方面へ走って行く。 (つづく)

6 件のコメント:

  1. こんなにオロフレ峠が青空なんて!良かったですね。
    登別の桜並木は雰囲気よいところですよね。
    中々、ぴったしのタイミングで行けないんですよ。

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    1. いちさん、こんにちは。
      快晴のオロフレ峠はめったにないので、ついてました。
      桜の満開に合わせて訪ねるのは、なかなか難しいですね。
      連休も終了ですね。北海道でも桜は山の中か、道東・道北の方を残すのみとなりました。

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  2. 全国各地の火山活動が心配ですね。

    さて、ポケモン号←マチガイ
    ゆきかぜ号の白・赤のツートンは、ワタシも大好きです。
    赤は、少し朱色に近いのかな?(実車を見た事はありません)

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    1. tkjさん、こんにちは。
      ゆきかぜの赤は、光の加減でいろいろ見えるのですが、明るいところだと、朱色に近い感じです。
      妻は「ポケモン」の他に、「モト子」とも呼びます。
      ちなみに妻は「ゆきかぜ」という名は知りません。
      そりゃあね。バイクに名前付けるなんて、男のすることとしてはね。はははのは。
      ブログと僕の中でだけ、「ゆきかぜ」なのでした。

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  3. 道道922号の素晴らしさを知っているライダーがいることに驚きました。
    あんなに走りやすく空いているのに今まで一度も他のバイクに遭遇したことがなかったもので。
    オロフレ峠は何年か前に走った時にグルービングがすごく二度と走らないと思ったものですが現在は改善されたのでしょうか?

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    1. 緒崎松蔵さん、こんにちは。
      わずか8kmほどの道のりですが、922は風景もよく、雰囲気もよく路面もよく、空いていて、ホントにいい道ですよね。
      私は特に脇道に詳しい方ではないですが、何か気になってふらっと入り込むことは多いです。
      メイン道路どこか味気なく、生活の匂いがする道が好きです。

      オロフレ峠の路面の排水縦溝、実はどうだったか思い出せません。(^^;)
      ところどころあったような気がします。しかし、全線通してみると、そんなになかったような…。
      わりと走りでも楽しめるなあ、と思ったので、だいぶ縦溝が減って浅くなったとか、舗装修復工事で縦溝ないのにしたとかで、変わりつつあるのかもしれません。
      うねうねと接地面が横にずれる縦溝は、バイクや自転車には危険ですよね。
      遭遇したらもう、割り切ってゆっくり通過するようにしています。

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