「月と川音」第3回 (最終回)
しばらくもしないうちに川の向こう岸の街の灯が切れて、
夜の闇が回りを支配してる感じになった。
暗い中でライトに照らされた所だけが白く明るく光って。
道はもうセンターラインもない細い道になってた。
先輩は速度を落とさない。
暗い闇の中から、突然景色がライトの輪の中心に現れて、あっという間に輪の外側に消えていく。
次々に輪の中心に新しいものが現れる。
木々の葉、道路の標識、カーブしてる道のガードレール。
速送りの白黒映画を見てるみたいだった。
狭い道で登ったり下ったり、右に傾いたり、左に傾いたり、景色の流れは相当速いんだろうけど、揺れはゆりかごみたいに感じた。
風切りのゴーっていう音と、バイクの音しか聞こえない。
なんだか地上じゃなくて別世界に来ているみたいな感じだった。