2020年5月22日

変なノーマルポジションの真意?


もう、何度も紹介している和歌山氏のV7Classicライド。
これはバイカーズステーション誌から引用しています。
美しい。何を乗っても、乗車姿勢が美しく、バイク本来の美しさを引き出してしまう。
名手和歌山俊宏氏の名手たるゆえんです。
だって、ほら、




身長差もあるんですが、なんか、カッコ悪いじゃないですか、この人。
この赤白カラーリングは、V7Special2013で、上のクラシックとはいろいろ違いますが、ポジションはほぼ同じとしてよく、ステップ回りもいろいろ違いますが、だいたい同じです。
大矢雄一氏はV7クラシックのステップ位置について、「事務机の椅子に腰かけたようだ」と言っていましたが、ステップ位置が普通のスポーツバイクからすると、前で高いところにあり、脚が前に出ているので、すっ、とステップ上に立ち上がることができない。
着座位置の真下にステップがない、変なポジションなんです。

この和歌山氏のライドでも、よく見ると、確かに着座位置よりステップは前にありますよね。でも、全然そんなことを感じさせない、自然で美しいフォーム。すごいです。
また、この写真からも、ハンドル幅がかなり広いことが分かると思います。


この昔のモトグッツィHPにあった写真でもかなりハンドル幅が広いのが分かると思います。
男性ライダーの身長が高く、手足がながいので、膝なんかシリンダーの上に被さっています。
上の写真たちと比べてみてください。
そして、この写真でも、着座位置よりステップが前にあるのが分かると思います。


さらに、モトグッツィのHPに昔載っていたケヴィン・アッシュ氏のライディングを見てもましょう。


アッシュ氏は身長約190㎝。V7は窮屈に見えます。ステップと、着座位置と、膝の内側を青い線で結んでみました。
写真で見る殆どのライダーがステップをつま先立ちで乗っているのですが、それでも、脚はこれだけ前にあり、いろんな方向に踏み込むのは難しいポジションです。


コーナリングを外側から見た写真。
くるぶしグリップができなくて、ブーツ内側をサイドカバーに当てています。
着座位置もステップよりかなり後ろ。ハンドル幅もひろ~い。
でも、一つ上の写真より違和感ないですね。

「ある人に聞いた話」ですが、
このステップ位置、流しているときは違和感ありまくりだが、飛ばしだすと違和感が消えるというのです。

飛ばすとはどういうことか?

「ある人」がいうには、バンピーな田舎の峠道をかっ飛ばす。
コーナーの手前でハードにブレーキングするとき、このステップは前に蹴るようにして減速Gに耐えるのに、最適ということです。
ステップを前に蹴り、両膝でタンクを挟み込み、ステップを蹴った反力でシートに乗っている臀部は後ろへ押し付けるようになる。
この三角形で下半身とマシンを一体化させ、上半身の胸から下くらいの荷重も、これで耐えられる、後は背筋で肩から頭までの重量に耐えれば、極端な前のめりが防げる。

また、幅広のハンドルは、こうして下半身をがっちり後ろ方向へ押さえつけるようにホールドした状態で、上体を伏せ気味にすると、ちょうどよく、大きな球を抱えるように上からハンドルを抱えるようなポジションになるというのです。

その人がいうには、この状態でライダーの荷重を過度にフロントにかけることを避けながら、バンピーな路面で振られるフロントをあまり力を入れずに抑え込むのに適しているというのです。
狭いハンドルを後ろから腕を突っ張って支えてしまうと、ステアリングの切れを抑え込むことになり、タイヤが左右に叩かれることによって逃がしていた外力を逃がせなくなり、ハンドルが振られるどころか、車体の振れが収まりにくくなる、対して、このポジションだと、不要な力を入れずに、ハンドルの振れを遊ぶところは遊ばせておいて、触れすぎないように抑えるべきところは抑えることが可能だとのこと。

加速Gには、ストリートファイターよろしく、肘を張って状態を前傾させてバランスさせ、
減速Gには、ステップを前に蹴りだすような入力で耐える。
そして、レーサーレプリカなどに比べれが柔らかめのフレームは、おおきな荷重を受けるとゆらゆらと縒れて来るものの、その揺れを抑え込まず、ある程度遊ばせて「いなす」には、先の尻、ステップ、膝の左右三角形があれば、くるぶしグリップでさらに抑え込まなくてもよくて、むしろ、抑え込まない方がいいのではないか……とのことでした。

その人が言うには、速度が乗ってくると、ある速さを越えたあたりから、コーナリング中のギャップを越えたり、バンピーなところを走ったりするとフレームが負け始めるとのことです。
しかし、全体に柔らかめのバランス。細いタイヤ、スポークホイール、昔の基準では太いが今ではそうでもない40φの正立フロントフォークなどの組み合わせと、このしなやかなフレームは、なめらかな路面なら7000rpmのレブリミットあたりでも十分な安定を見せ、バンピーなところでは、上記の速度くらいから徐々に全体が負けてきて、「そろそろやめておけ…」と、マシンの方から教えてくれるというのです。
何にもないまま快適に、バイク任せで超高速域で走れるが、下手をするといきなり限界を超えてしまうよりも、運動エネルギーの増大にそって、徐々に車体全体が負け始めて残りマージンの減少を少しずつ実感させてくれる方が、安心、安全だと言える。

…というか、MOTOGUZZIV7の最高出力、50PSで全力疾走できて、そのエネルギーの大きさをリアルに伝えてくれる方が、走っていてはるかに面白い、楽しいだろう…と。

そして、その時のV7の生き生きとした表情、その動きは、「走るために生まれて来たんだ!」、「全力疾走って、気持ちいいものなんだ!」と、歓喜に踊り出しているかのようだと。

これは危険な香り。
こんな危険な香りが200psでしたら、これは速すぎて危ない。
50psでも十分危ないけれど、まだ、かわいい部類。
しかも、60NMの最大トルクは、2800rpmで発揮されるので、相手がヒステリックにならない限り、常識的な領域では、ほとんどどのバイクにも、4輪にも引けはとらない。

「おっと」
話がずれていて、変なオーナー愛になってますよ。
と私が言うと、その人は、ああ、すみません、私、いつもそうなんです
と、言ったとか言わなかったとか。

というのが、ノーマルステップ、飛ばすといい、という話です。

7 件のコメント:

  1. ご無沙汰しております。


    ヒールホールド、くるぶしホールドをしない方がより良くオートバイを操作できる、、、という事態に陥りまして読み返させて頂きました。

    教官殿にもかかとを付けろと言われたものですが。。。原因を検証中です。
    (車体ホールド 直線②ニーグリップも拝読させて頂きました)

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    1. 緒崎松倉さん、こんにちは。
      「くるぶしホールドしないほうがより良くオートバイを操作できる…、」ですか。
      うーむ、どうしてでしょう。

      シートへの荷重ですとか、下肢の三角形(上図)の力のバランスの関係でしょうか…?
      あと、私の場合、ニーグリップだと肩が落ちるんですが、ニーグリップよりくるぶしホールドに力が入ると、肩が上がってしまうという癖がありました。
      くるぶしホールドの基本って、スタンディングポジションの時の車体の押さえ方だと感じているんですが、私の場合は、膝とお尻がマシンから離れて接点がステップ、ハンドルだけになると、いつの間にか緊張が肩に力を入れさせることが在ったようです。
      スタンディングでもニーグリップ、というか、下肢全体でのホールド…と、自分に言い聞かせていました。
      …でも、くるぶしホールド、しないよりした方がいい感じがするのですが……、
      本当のところ、どうなんでしょう。

      とてもおもしろい…と言えば、不謹慎ですが、非常に興味深いお話です。
      よろしければ、探求結果も、緒崎さんのブログで教えてください。

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    2. 早速の返信ありがとうございます。

      スタンディング!
      すっかりスタンディングの時の事を忘れてました。
      考えの幅が広がりそうです。

      下肢の三角形の力のバランスもなのですが、特にコーナーリングの時の上半身の影響も受けているようです。
      とりあえず検証を重ねて原因を探りたいと思います。

      ありがとうございました。

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  2. こんばんは。ブログを読ませてもらっています。
    v7を買って2ヶ月立ちましたが、峠にいくとくるぶしグリップができないのが違和感ありますよね。
    私は、その分タンクを使ってニーグリップを強めています。
    また、ハンドルやステップの位置的に、かなり後ろに座ることを求められるポジション設定なのかなと感じています。
    シートのタンデムベルトにお尻の後端が乗るぐらい、いつも後ろ乗りで乗っていると楽しいです。
     樹生さんも、普段後ろ乗りなのでしょうか?

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    1. 佑記さん、こんにちは。
      仰る通り、V7は比較的シート後ろに座った方が自然に素直に車体が動く感じがして、
      私もやや後ろ目に座っていて、ワインディングではさらに少し後ろにお尻を引く感じになっています。
      その時には、確かにシートのベルトに触れるくらいの位置だったかもしれません。
      私はベビーフェイスのバックステップに換装しているのですが、
      ステップが後ろ(結果として一般的な前後位置)になったことによって
      着座位置が前にずれやすくなっている…という状態になっています。
      着座位置が前になるとニーグリップが自然に決まらなくなる…意識しないと決まらなくなるので
      ノーマルステップの時よりもやや意識して着座位置が前にならないようにしています。

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    2. 樹生さん。ご返信ありがとうございます。
      やはり、シートの後ろ側に座るのがいい感じなのですね。

      v7の純正ハンドルが気に入らなくて交換した等レビューされている方もいますが、主にハンドル位置のために後ろ乗りを求められるポジションだと思っています。
      メーカーから、後ろに座ってねというメッセージだと感じます。

      バックステップにした時のポジションも面白そうですね。一度v7レーサーの純正ポジションがどんなのか確認してみます。

      これからもブログ楽しみにしています。
      僕もブログ初めてみようかなと思いつつ、
      中々始められていないこの頃です。

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    3. 佑記さん、ありがとうございます。
      なかなか更新できていませんが、
      4月にシーズンインしたら、またボチボチ記事も増やしていけると思います。
      今回のポジションについてはYouTube動画でもしゃべっていますので、
      もしよろしかったらご覧ください。

      ☆MOTOGUZZI V7. The Identity of Italian. Owner's Impression.
      https://youtu.be/FQeJepvuVqE
       V7のエンジン、雨に対する耐候性、ニュートラルランプの点灯の件、ポジションの考察等

      他にこういうのもあります。

      ☆【MOTOGUZZI V7ハンドリング】オーナーズインプレッション
           https://youtu.be/SAjcUXEc418
         ※モトグッツィV7のハンドリングについて話している動画です。

      ☆ MOTOGUZZI V7 City run. Owner's Long term(8 years) Impression. 
           https://youtu.be/Ha-FaMYZxu4
         ※モトグッツィV7の街乗りインプレッションです。

      動画の方は、全くの初心者で恥ずかしい限りですが、ご参考になれば、幸いです。

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